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ディアヴォ

「……っせーな!!このクソギターが!!」

激しい銃弾のような罵声の後に響くのは、大砲を撃ったように重たい、ドアの閉まる音。
知らぬ人ならば何事かと駆け寄って様子を見に行くのだろうが、こう頻繁に起きていることではいちいち気にしている場合ではない。
やれやれとため息をついていれば、ほら。
床を踏み抜いてしまうほどの音を立てながら彼がリビングにやってきた。

「あンのクソギターマジねーわ。」

どっかとソファに腰掛けて、これでもかと言わんばかりの大きなため息をつく。
また新曲のことで相方と意見が合わなかったらしい。
それは毎度のことなのだけれど。

「電話……してたんだよね?」
「……そーだけど。つか、あんたには関係ねーだろ」
「そんなことないよ。」

篝火のいちファンとしては、ヴォーカルのジュダと相方のギターが不仲では今後の行く末が心配で仕方ない。
これまでだってジュダから篝火は解散する、というワードが何度も飛び出していた。
結局は何事もすべて丸く収まってきたからいいものの、今回もまたそうなるかは微妙なところだ。
ここはなるべく穏便に進めて頂きたい。

「あ……クソッ。曲はまとまんねーし、クソギターは相変わらずうるせーし」

眉間に皺を寄せて舌打ち。
何かがぶつかった音だけは聞こえなかったから、スマホだけは投げずにいてくれたようだけど、彼の機嫌は今最悪モードだ。
ひとまずはそっとしておいた方がいいかもしれない。
そっと離れようとすると、獲物を狩る動物のようなスピードで腕を掴まれた。
そして、あれよあれよという間にソファに押し倒される格好に。

「……ってわけで。アンタで気分転換することにした。」

なにがどう繋がってその答えにたどり着いたのか分からないが、わたしのYESもNOも待ってはくれず、噛み付くようなキスが間髪入れずに降り注ぐ。
受け止めるので精一杯で、呼吸すらままならいない。
そんなわたしを満足そうに目を細めて、ジュダはぺろりと舌なめずりをした。

「やっぱアンタ、サイコーだわ。」
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