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その他

いつからだろう。
壁外調査に出る度に、こうしてお互いを求めるようになったのは。

「……ん、エレ……ン」

遠くで、慌ただしい声が聞こえる。
他のメンバーは、忙しなく支度を急いでいるというのに。
私たちは、通路に隠れてお互いの唇を貪り合っている。

「……そろ、そろ行かない、と……」
「もう少し」

私を壁に縫いつけるようにして、エレンは一向に離してくれようとしない。
後で遅い、と兵長に睨まれる姿が目に浮かぶ。
とはいえ、私も本気で拒めないから同罪なのだけど。

「……ミカサ……」

吐息に混じって名前を呼ぶなんてずるい。
抵抗も出来なくなる。
ゆるゆると思考の回る速度が落ちてゆく。
絆されて静かに瞼を閉じようとした、その瞬間。
遠くの方で私の名前が呼ばれていることに気がついた。
あの声は……

「……兵長、呼んでるな。」
「そう、みたい……。」

無理やり現実に引き戻されたのを惜しむように、ため息混じりでエレンは身体を離した。
タイムリミット、だ。

「ミカサ、死ぬなよ。」
「大丈夫。エレンを残して死なない。」

そっと私の頬に触れた彼と、視線がぶつかる。
その大きな瞳に、私が写った。
また、強く抱きしめられた。

「……ミカサ、愛してる。」

エレンは耳元でそっと囁く。
私も、と続けようとしたら、人差し指を唇に当てられて制されてしまった。

「続きは、帰って来たら聞くよ。」

その言葉が何を意味しているか、今ならわかる。
頬がかぁっと紅潮する。
マフラーに顔を埋めて隠してみたけれど、きっと気づかれてしまっているに違いない。

「……エレン、すき」

それだけは、言葉にならずに消えた。
今はまだ、それでいい。
帰ってきたら、伝えるから。
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