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その他

暗闇の中で、はっと目を覚ます。
反射でその身を起こし、隣に視線を向けた。

ーあぁ、よかった……息をしている。

規則的な寝息を確認して、ほっと胸を撫で下ろす。
月明かりに照らされた彼の寝顔は随分と幼くて、ふと出会ったばかりの頃を思い出してしまう。
初めてマフラーを巻いてもらったときは、まさかこんな事になるなんて、予想すらしていなかった。

「……エレン」

小さくその愛しい名前を呼ぶ。
貴方を守るために私は存在していたはずなのに。
残された時間はあまりにも少なすぎて、自分の無力さが憎らしい。

どうにかして命を繋ぐ方法を探せばよかった?
二人で逃げようなんて言わなければよかった?

頭の中を駆け巡るのはたらればの未来。
もう、何を後悔しても遅いのに。

「……ミカサ、泣いてるのか?」

はっと顔を上げると、いつの間にか目を覚ましていたエレンが不思議そうにこちらを見ている。
そして、無意識のうちに頬を伝っていた涙を拭ってくれた。

「エレンが、いなくなったのかと思って」

素直に不安を口にすると、ミカサが弱音なんて珍しいなと笑って、エレンはそっと私の肩を抱き寄せた。
そのまま重なった唇が、とても熱い。

「大丈夫だって。今は"まだ"ここにいるだろ」

別れの日は確かに、そう遠くないうちに訪れるけれど、それまではずっと一緒だ。
まっすぐ大きな瞳がそう語っている。
嬉しい、でもお別れは辛い。
もっとずっと一緒にいたい。
そう思ったらまた、涙が一筋頬を伝った。

「今日のミカサは泣き虫だな」

しょうがない奴、と彼は苦笑して。
もう一度私の唇とエレンのそれを重ねた。

今度は確かに、さっきよりももっと熱を帯びて。

愛してるの代わりに、何度も、何度も。
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