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その他

久しぶりにゆっくりしたオフが取れたからと誘われた翼くんとのデート。
その終わりに連れてこられたのは、ホテルのオシャレなバーラウンジ。
きっと彼が飲みたいんだろうなという言葉は飲み込んで、カウンターに並んで座る。
手渡されたメニューに目を落とすけれど、お酒に疎いわたしには、なにがなんだかさっぱりわからない。

「……アレないの?」
「アレ?」
「ほら、前にBAR SolidSでオススメって言ってたやつ。」

しばし考えて、あぁと軽く手を叩く。
そしてコンマ数秒で却下されてしまった。
サイドカーはダメ、と。

「なんで?」
「あの時は言ってなかったかもだけど、結構アルコール度数強いから。」

お酒に弱いわたしが飲んだら文字通りひっくり返ることになるのだとか。
だから結局は翼くんが適当に見繕ってくれたカクテルに落ち着く。
それはそれで嬉しいのだけど。

「これならあんまり強くないからいーんじゃない?」

わたしの好きなピーチリキュールを紅茶で割ったお酒。
ひと口含んだだけでふわりと桃のいい香りが鼻腔を擽った。

「んー!美味しい!」
「こういうの、好きでしょ?」

さすが、好みは全部熟知されてるみたい。
全部お見通しなのはいつもなら少し膨れっ面にもなるところだけど、今はアルコールでふわふわしているからさほど気にならない。
むしろ、わたしのために選んでくれた嬉しさの方が先行して、つい表情が緩んでしまう。

「なに、もう酔ってんの?」
「酔って……ないよぅ……」
「酔ってんじゃん。」

玩具で遊ぶみたいに笑う翼くん。
テーブルの上に置いていた手に、彼のそれが重ねられて一瞬鼓動が跳ねた。
その不意を突いて、ほんの僅かに触れるだけのキスをされる。
もしかしたらバーテンダーさんには見られていたかもしれないと思うと、頬に灯る熱が一気に上がった。
それをまた面白おかしく眺めながら、翼くんはそっと耳元で囁いた。

「あんまり可愛い顔すると、お持ち帰りしたくなっちゃうんだけど……?」

もうすぐ終電も近い。
絶対にそれを逃す訳にはいかない。
明日は翼くんだって仕事があるはずだから。
そう思っているのに。

次のひと口を強めに煽ってしまったのは、きっと意地悪な翼くんのせい。
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