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その他

すべてが終わったあの日から数日後。
唐突に、彼は姿を消した。

『外の世界を見てくる』

そう、書き残して。


あれから、いつの間にか5年の月日が流れた。
未だ彼、エレン•イェーガーは戻らないままだ。
私には、ついていくと言うことすら許してくれなかった。
エレン。
あなたは今、どこにいるの?

「……サ。ミカサ!」
「……?!」

アルミンに肩を揺すられて、ふと我に返る。
しまった、また考えていた……。

「大丈夫?」
「う、うん……。」

調査兵団の団長補佐に就いてからも、相変わらずアルミンは私のことを気にかけてくれる。

「ちゃんと睡眠摂ってる?」
「大丈夫。」

平静を装って頷いて見せるけれど、きっと彼はお見通しだ。
ため息をついて、苦笑している。
気持ちはわかるけど、と。

「おい、ミカサ。」

その矢先、突然ジャンがひどい仏頂面で部屋に入ってきた。
なにか、事件だろうか。

「今、怪しいやつが……ミカサに会わせろって、入口で聞かねーんだよ。」
「怪しい、やつ?」
「ボロボロのフードで隠してて、顔見せねーし。」

その人は、ただミカサに会わせろ、としか口にしないという。
会いにいくべきだろうか。
答えに迷って、ついいつものようにアルミンへ視線を向けた。

「行ってきたら?」
「え……」
「ミカサなら、大丈夫だと思うけど。」

その根拠は、わからない。
でも、アルミンがそう言うのなら、大丈夫なのだと思う。

「…………わかった。行ってくる。」

言い様のないこの気持ちはなんだろう。
すれ違い様に視界を過ぎった、あのジャンの複雑そうな表情もわからない。
二人も一緒に、と言いかけたけれど、それはジャンに制されてしまった。

「いいからさっさと行け。」

背中を、押してくれた気がした。









☆ ☆ ☆


扉を開けると、そこには本当にボロボロのフードを目深にかぶった、辛うじて男だとわかる人が立っていた。

「……誰?」

私が声を発すると、その人は急に声を上げて笑った。

「……ははっ。お前、変わらないな。」

それを聞いた途端、身体が動けなくなった。
どうして?なぜ?
あなたがここにいるの……?

「エレ、ン…………?」
「そうだよ、ミカサ。」

ようやくフードを取ると、そこには懐かしい幼なじみの笑顔があった。

「エレン!」

私はいてもたってもいられなくなって、衝動的に彼の腕の中に飛び込んだ。

「エレン……エレン……!」
「ただいま、ミカサ。」
「どうして今まで……!とてもっ……心配………!」

嗚咽混じりで、上手く言葉にならない。
でも、エレンはそんな私をぎゅっと抱きしめてくれた。

「ごめん。いっぱい待たせて……ごめん。」
「もう、帰ってきてくれないかとっ……」
「そんなわけないだろ!」

あの頃を思い出させるように、力いっぱい否定してくれたのは嬉しかった。

「気持ちの整理がついたら……言おうと思ってたことがあるんだ。」

それを伝えるために帰ってきたんだ。
大きな瞳でまっすぐに見つめられて、妙な緊張が走った。

「……ミカサ、大好きだ。」
「……っ!」
「オレと、結婚してくれ。」

その瞬間、気持ちが溢れた。
決壊した、という方が正しいかもしれない。
嬉しい、幸せ、ありがとう。
いろいろな感情がごちゃまぜになって押し寄せてくる。

「エレン……」

承諾の代わりに小さく頷くと、私を抱きしめてくれる腕に力が込められた。
力強く、でも優しく。

「ずっと、一緒にいてくれる?」
「あぁ。」
「もう、置いていったりしない?」
「もちろん。」

何度も何度も尋ねる。
彼がここにいることを、確かめるように。
……大丈夫。
これから一人じゃない。
私たちは、ずっと一緒だ。












【おまけ】


「いつまで不機嫌なのさ、ジャン。」
「あぁ?」

ミカサが出て行ってから、ずっと膨れっ面のままの同期に、いささかため息が漏れる。
まぁ、無理もないのだけれど。

「なんでエレンの野郎なんかのためにここまでしてやらなきゃなんねーんだよ。」
「ミカサのため、でしょ?」

図星を指せば、眉間のしわが深くなる。
本当に、相変わらずわかりやすいなぁ。
そこが彼のいいところでもあるのだけれど。

「いい加減、オレも吹っ切らないと……な。」

そうかすかに呟いて、窓の外へ送るジャンの眼差しは、とても穏やかだった。

「さ、僕らは仕事に戻ろう。」
「…………だな。」
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