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勿忘草

あの時となんら変わらないのに。
幸せは、もっと大きくなっている。

「おかえりなさい。」

一日の仕事を終えて家に帰ると、愛しい彼女が出迎えてくれる。
それだけで疲れなんて吹き飛んでしまう。

「いやー、今日も働いたぜ~」
「お疲れさまです。」

夕餉の支度も出来てます、と満面の笑みを見せてくるものだから
俺の中でなにかがぷつりと切れた。
ここが玄関先だということも厭わずに
思いっきり彼女を抱きしめた。

「ちょ、ちょっと……平助さん?!」

腕の中で、ご近所さんに見られたらと顔を真っ赤に染める彼女はやっぱり可愛い。
ついでに口づけをひとつ、彼女の唇に落としてやれば、
もっと頬を朱に染めるものだから、本当に見ていて飽きない。

「こ、こ、こんなとこで……!!」
「ん?なら、家の中ならいいのか?」
「そ、それは……その……」

恥ずかしさのあまり俯いてしまうけれど、
その中で小さく首を縦に振ってくれたのを、俺は見逃さなかった。

「あー、もう!お前ほんと可愛いな!」

もう一度、強く抱きしめたいのはやまやまだが、
照れ隠しの鉄拳が飛んでくるのはわかりきっているので
今は不意打ちの口づけを額にひとつ。

今夜はその分、たっぷり愛してやるから……
覚悟しとけよ?
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