勿忘草
「八番隊、ただいま戻りましたー」
見回りを終えて屯所に帰る。
いつもならば出迎えに彼女が来てくれるのだが。
なぜが今日に限っては現れる気配すらない。
そのことに違和感というか不安を覚えて、
報告もそこそこに、彼女を捜すために屯所の中を駆けた。
「よかった、ここにいたのか。」
自室にいてくれたことには安堵したが、
敷かれた布団に横たわる姿に、背筋にぞくりと悪寒が走った。
「あ……藤堂さん……おかえりなさい」
赤らんだ頬のまま、気だるさそうに半身を起こす彼女。
具合が悪いのは明らかだ。
朝見送りに出してくれた時はそんな素振りまったく見せていなかったが、
この様子を見る限り、朝も相当無理をしていたに違いない。
「無理すんな、寝てていいから。」
「あ、はい……すみません。」
申訳なさそうに布団に戻るのはいいのだが、
厨房におにぎりがあるので良ければ食べてください、と言うあたり、
彼女の仕事ぶりには頭が下がる。
が、恋人としては話は別だ。
「ちゃんと休まねーと、治るもんも治らないだろ?」
自分の額と彼女のそれに手を当てて熱を見る。
見た目通り、かなり高いに違いない。
「薬は飲んだのか?」
「はい……さっき山崎さんからいただきました……」
それならひとまずは安心だろう。
胡散臭い石田散薬ならば冷や汗ものだが。
「なんか他に欲しいものとかあるか?食えそうなものとか……」
ゆるゆると首を横に振るのは、ある程度想定の範囲内。
こんな時くらいは素直に頼ってくれればいいのにと思って仕方がない。
「ばーか、遠慮すんなって。」
そっと頭を撫でてやると、微かに彼女の唇が何かを紡いだ。
もちろん、それを聞き逃すはずはない。
「……もう少しだけ……平助さん……一緒にいてください……」
普段は他の隊士の目があるからと苗字でしか呼んでくれないのに
ここぞという時に使ってくるのだから、本当にずるい。
愛おしすぎて抱きしめたい衝動に駆られてしまう。
「わかったよ。お前が寝るまで、ここにいてやる。」
そっと彼女の手を握ると、安心したようでふにゃりと表情が緩んだ。
まったく、可愛らしいことこの上ない。
「ゆっくり休んで、早く治せよ。」
触れるだけの口づけを、火照った額に落とす。
この続きは、また近いうちに。
見回りを終えて屯所に帰る。
いつもならば出迎えに彼女が来てくれるのだが。
なぜが今日に限っては現れる気配すらない。
そのことに違和感というか不安を覚えて、
報告もそこそこに、彼女を捜すために屯所の中を駆けた。
「よかった、ここにいたのか。」
自室にいてくれたことには安堵したが、
敷かれた布団に横たわる姿に、背筋にぞくりと悪寒が走った。
「あ……藤堂さん……おかえりなさい」
赤らんだ頬のまま、気だるさそうに半身を起こす彼女。
具合が悪いのは明らかだ。
朝見送りに出してくれた時はそんな素振りまったく見せていなかったが、
この様子を見る限り、朝も相当無理をしていたに違いない。
「無理すんな、寝てていいから。」
「あ、はい……すみません。」
申訳なさそうに布団に戻るのはいいのだが、
厨房におにぎりがあるので良ければ食べてください、と言うあたり、
彼女の仕事ぶりには頭が下がる。
が、恋人としては話は別だ。
「ちゃんと休まねーと、治るもんも治らないだろ?」
自分の額と彼女のそれに手を当てて熱を見る。
見た目通り、かなり高いに違いない。
「薬は飲んだのか?」
「はい……さっき山崎さんからいただきました……」
それならひとまずは安心だろう。
胡散臭い石田散薬ならば冷や汗ものだが。
「なんか他に欲しいものとかあるか?食えそうなものとか……」
ゆるゆると首を横に振るのは、ある程度想定の範囲内。
こんな時くらいは素直に頼ってくれればいいのにと思って仕方がない。
「ばーか、遠慮すんなって。」
そっと頭を撫でてやると、微かに彼女の唇が何かを紡いだ。
もちろん、それを聞き逃すはずはない。
「……もう少しだけ……平助さん……一緒にいてください……」
普段は他の隊士の目があるからと苗字でしか呼んでくれないのに
ここぞという時に使ってくるのだから、本当にずるい。
愛おしすぎて抱きしめたい衝動に駆られてしまう。
「わかったよ。お前が寝るまで、ここにいてやる。」
そっと彼女の手を握ると、安心したようでふにゃりと表情が緩んだ。
まったく、可愛らしいことこの上ない。
「ゆっくり休んで、早く治せよ。」
触れるだけの口づけを、火照った額に落とす。
この続きは、また近いうちに。
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