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刀剣乱舞

「なんだこれ……?」

ふと、戦を終えた山姥切はじっと自分の手を見た。
今の敵を倒したことで、確かな手応えを感じたのは間違いないのだが、それ以上の何かが溢れて止まらない。

「山姥切、どうかしたの?」

なかなか後を追ってこない彼を心配して、審神者が駆け寄ってくる。
だが、どう説明すればいいのかもわからず、困ったように彼女を見ることしか出来なかった。
そんな山姥切に、審神者はにこりと微笑んだ。

「おめでとう、山姥切。」
「どういう……ことだ?」

審神者いわく、自分は特付きになったらしい。
詳しいことはよくわからないが、ようするに強くなれたらしい。
その事を主も喜んでいるので、良いことなのだろう。

「今はこれしか持ち合わせがないけど、本丸に戻ったらちゃんとご褒美渡すね。」

そう言って審神者が差し出してきたのは、見たこともない円形のもの。
2枚重なっていて、間には小豆のようなものがちらりと見える。

「これは……?」
「どら焼きだよ?知らない?」
「……初めて見る。」

まじまじといろんな角度から眺めてみると、その姿を楽しそうに主は笑う。
美味しいから食べてごらん、と言われて、これが食べ物だということにまた驚いた。

「……美味い。」
「ほんと?よかった!」

これは主も好物なのだと教えてくれた。
ならば、いつか共に食べられる日も来るのだろうか、などと考えてしまう自分がいる。
所詮、審神者と刀という関係でしかないのに。

「主……ありがとう。」
「こちらこそ、いつも頑張ってくれてありがとう。」

また、主は満面の笑みを向けてくる。
この笑顔に何度救われてきたのだろうな、俺は。

「おーい!主ー!なーにやってんのー?」

待ち切れなくなった加州清光の声が向こうから聞こえる。
そうだ、ここはまだ戰場だ。

「山姥切、これからもよろしくお願いします。」
「……当たり前だ。」

この身が砕け散るまで主を守る。
選ばれたからではなく、俺自身がそう決めた。
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