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刀剣乱舞

遠征から本丸に帰ると、何故かそこは騒然としていた。

「なんかあったのか?」
「……みたいだな。」

隣にいる獅子王と見合わせて、お互いに首を捻る。
ともかく、一刻も早く状況把握をするために、俺たちは中へと急いだ。
まずは審神者の部屋へと思ったが、途中で長谷部とすれ違う。
そこであらかた聞いてしまえばいいかと声をかけたのだが。
顔面蒼白で狼狽えているだけなので、話にならない。
さらに廊下を進めば、ようやく話の通じそうな燭台切とすれ違った。

「あぁ、山姥切。おかえり。」
「一体何があったんだ。」
「主がね……倒れてしまったんだよ。」

言いづらそうに口を開いたかと思えば、予想外の言葉が飛び出した。
なんでも、最近の連戦で刀装やら鍛刀を繰り返したせいで審神者の霊力が底を尽きたらしい。
あいつはそんな素振り、全く見せなかった。

「しはらく休めば大丈夫だとは思うよ。」
「そ、そうか……」

とはいえ、居ても立ってもいられない。
あれこれ考えるより早く、身体の方が動いていた。
敵陣に斬り込む時の速さで、むしろそれ以上で審神者の部屋に駆け込んだ。

(なんで何も言わなかったんだ……)

部屋に敷かれた布団に横たわる彼女の顔には血の気がなく、一見生きてるのか疑いそうになる。
辛うじて聞こえる寝息が生きていることを伝えているが、安心は出来ないような気がする。
燭台切は大丈夫だと言ったけれど、不安は拭えない。
こんな時、何も出来ない自分がもどかしくてたまらない。



そして、三日の時が過ぎた。



「……やま……ば……ぎり……?」

ようやく、彼女が目を覚ました。
まだ意識ははっきりしないようで、焦点もふわふわ漂っているが。
その瞬間何かがぷつりと弾けた。
ゆるゆると起き上がる半身を、半ば強引に抱き寄せた。

「……よかった……」

彼女の肩に顔を埋めれば、安堵の声がこぼれる。
嫌な想像ばかりが、この三日間頭の中をかけ巡っていたが、ようやく杞憂に終わってくれた。
無意識のうちに、抱きしめる腕にも力がこもる。

「ずっと……そばに、いてくれたの?」

そうだと小さく肯けば、ありがとうと柔らかな声が耳朶を掠めていく。
愛おしい、と心底思った。
その時、不意に視線が絡み合った。
ふわりと彼女が微笑むのが合図のように、どちらからともなく唇を重ねた。
軽く触れ合うだけのそれから、次第に深く甘く。
互いの存在を確かめるように。

もう少し、あと少し、もっと。

ただひたすらに求め合った。
何度も何度も、愛してると伝える代わりに。
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