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刀剣乱舞

「それじゃぁ、行ってくるね。」

障子から顔を覗かせた燭台切光忠が、にっこりと笑う。
そういえば、今日は彼が第一部隊の隊長だ。

「気をつけて……行ってらっしゃい。」

あまり強い敵のいるところではないし、隊員たちも最強のメンツを揃えてあるし、
刀装も、持っているものの中では最高の物を渡してある。
よほどのことがない限り、ほぼ無傷で戻ってくるはず。
そう、思うのだけれど。

「まったく……主は心配症だね。」

失礼するよ、と執務室に入ってきた彼は、少し困ったように微笑んだ。

「こんな時に……ごめんなさい。」

通常の敵はさておき、本当は検非違使が出るかもしれない場所になんて行かせたくない。
不安になってしまうわたしを、光忠はそっと抱きしめてくれた。

「大丈夫、すぐ戻ってくるよ。」
「うん……無理は、しなくていいから。」

きちんと送り出さなければいけないのに、顔が上げられない。
それを知ってか知らずか、不意に彼がわたしの顎に触れ、くっと上を向けさせてくる。
問答無用で、視線がぶつかる。

「主が不安にならないように、おまじないをしてあげよう。」

微笑みと共に、降って来たのは想像以上に深い口づけだった。
甘くて、とろけそうで。
次第に頭の中がふわふわしてきて、身体にも力が入らなくなる。
そして、がくりと崩れた。

「あはは、少しやり過ぎたかな。」

笑い事じゃない、と反論したいところだけれど。
わたしの思考回路はすでに正常には働いてくれない。

「続きは、帰ってからだね。」

いつも以上に不敵な笑みと共に、額に触れるだけの口づけが落とされる。
もう、頬が熱くてたまらない。

「それじゃ、今度こそ行ってくるね。」

ひらひら手を振りながら、光忠は部屋を後にした。
わたしはといえば、それをただただ呆けた頭で見送ることしか出来なかった。
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