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刀剣乱舞

「……あれ?」

仕事をひと段落させ、自室を出たところに、珍しい顔に出会った。
縁側に足を投げ出して、特に何をするでもなくぶらぶらさせているのは、少し前に鍛刀によって顕現した大和守安定だ。

「何してるの?」
「……別に。」

喧嘩も多いけれど、何かといつも加州清光と一緒にいるので、あまり2人で話す機会は多くない。
社交的な加州とも正反対な性格もあるだろう。
まだどうにも警戒されているらしい。
これは、仲良くなるためのいいチャンスかもしれない。

「そうだ、安定にこれあげる。」

そっと彼の前に差し出したのは、小さな金平糖の袋。
現世からこっそり持ってきたものだ。
甘いものを食べながら仕事をするのは、近侍の燭台切に怒られてしまうから、普段は隠してある。

「これ……」
「金平糖だよ。お砂糖で出来てるお菓子。」
「……知ってる。」

1粒口に運んだ彼が、不意に懐かしそうな眼差しを手元に落とす。

「これ……沖田くんも食べてた。」
「え?沖田、さん?」

かつての彼の主との思い出に触れたらしい。

「近藤さんがくれたんだーって、時々食べてた。」
「沖田さんも好きだったの?」
「……うん。甘いもの、全部好きだった。」

もうひとつ。
口に運んで、呟いた。

「沖田くん……こんなの食べてたんだね……」

その姿がなんだか無性に可愛らしく見えて、怒られるのを覚悟で彼の頭をそっと撫でた。

「なっ、なに?!」
「美味しい?」
「……うん。」
「そうだ、もっと沖田さんの話聞かせてよ。」

安定にとっては予想外の提案だったようで、鳩が豆鉄砲をくったような表情になる。
けれど、すぐに嬉しそうにくしゃりと笑った。

「沖田くんはね……」

子どもみたいにはしゃいで、懐かしい思い出を次々に話してくれる。
いつか、そんな風に話してもらえるくらいの主として認めてもらえるだろうか。
そんなことを思いながら、彼の話に耳を傾けた。
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