刀剣乱舞
ある日、この本丸に1通の封書が届いた。
こういうものはまず近侍が中を改め、審神者に指示を仰でことになっている。
その習の通り、近侍たる山姥切国広は封を切る。
しかしすんでのところで差出人が政府ではないことに気がつき、その手を止めた。
踵を返して審神者の執務室へと急いだ。
根拠のない不安だけが募る。
何か悪いことの前触れでなければいいのだが。
「俺だ、入るぞ。」
一声だけかけて、半ば強引に襖を引く。
返事も待たずに部屋へ入ってくることを審神者は咎めたりはしない。
むしろ遠慮がなくなったことを喜んでいた。
「封書が届いていた。政府からじゃない。」
彼のただならぬ様子から何かを察し、審神者も作業の手を止めて急いで封書を改めた。
しばらく黙って目を通し、ふと息をつく。
その表情はやはり明るくはない。
「実家からの手紙よ。ちょっと厄介なことになったから、少し帰ってこいって。」
「そ、そうなのか……。」
よほど急ぎの用事らしく、今日中に支度をして明日にはここを経たねばならないらしい。
遠征部隊も急遽帰還を要請し、夜には事の次第を全員に通達した。
そして、翌日。
「それじゃぁ、行ってくるね。」
「あぁ……」
「面倒を押し付けてごめん。なるべくすぐ戻るから。」
普段は白衣に緋袴を纏っている審神者が、今日は見慣れない洋装だ。
なんだか別人のように、山姥切の目には映る。
「……待て。」
玄関を出ようとする彼女の腕を、ぐっと掴んで引き寄せた。
半ば無意識の行動だった。
「くに……ひろ?」
「今度は……帰って来るんだよな」
今にも泣き出しそうな子どもみたいな表情が、フードの下に見え隠れしていた。
かつて審神者が本丸を一時的に離れた際、いろいろな悪条件が重なって長い間本丸にな戻れなかったことがあった。
彼はそれを思い出して危惧しているのだろう。
「うん、大丈夫。すぐ帰ってくるわ。」
笑顔で答える彼女をぎゅっと抱きしめて、そして口付けた。
約束だぞと言わんばかりに。
こういうものはまず近侍が中を改め、審神者に指示を仰でことになっている。
その習の通り、近侍たる山姥切国広は封を切る。
しかしすんでのところで差出人が政府ではないことに気がつき、その手を止めた。
踵を返して審神者の執務室へと急いだ。
根拠のない不安だけが募る。
何か悪いことの前触れでなければいいのだが。
「俺だ、入るぞ。」
一声だけかけて、半ば強引に襖を引く。
返事も待たずに部屋へ入ってくることを審神者は咎めたりはしない。
むしろ遠慮がなくなったことを喜んでいた。
「封書が届いていた。政府からじゃない。」
彼のただならぬ様子から何かを察し、審神者も作業の手を止めて急いで封書を改めた。
しばらく黙って目を通し、ふと息をつく。
その表情はやはり明るくはない。
「実家からの手紙よ。ちょっと厄介なことになったから、少し帰ってこいって。」
「そ、そうなのか……。」
よほど急ぎの用事らしく、今日中に支度をして明日にはここを経たねばならないらしい。
遠征部隊も急遽帰還を要請し、夜には事の次第を全員に通達した。
そして、翌日。
「それじゃぁ、行ってくるね。」
「あぁ……」
「面倒を押し付けてごめん。なるべくすぐ戻るから。」
普段は白衣に緋袴を纏っている審神者が、今日は見慣れない洋装だ。
なんだか別人のように、山姥切の目には映る。
「……待て。」
玄関を出ようとする彼女の腕を、ぐっと掴んで引き寄せた。
半ば無意識の行動だった。
「くに……ひろ?」
「今度は……帰って来るんだよな」
今にも泣き出しそうな子どもみたいな表情が、フードの下に見え隠れしていた。
かつて審神者が本丸を一時的に離れた際、いろいろな悪条件が重なって長い間本丸にな戻れなかったことがあった。
彼はそれを思い出して危惧しているのだろう。
「うん、大丈夫。すぐ帰ってくるわ。」
笑顔で答える彼女をぎゅっと抱きしめて、そして口付けた。
約束だぞと言わんばかりに。