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刀剣乱舞

執務室を出ると、縁側に足を投げ出して満開の桜をぼうっと眺めている白山吉光がいた。
彼はまだこの本丸に顕現して日が浅い。
そのせいか、はたまた刀とは似て非なる剣という刀種のせいか、あまり他の刀剣男士たちと一緒にいる姿を見ていない。

「白山くん」

声をかけると、少し驚いたように目を丸くしてこちらを見るが、審神者だと確認してほっとしたような表情になる。

「桜、きれいだね」
「この桜……わたくしのために主さまが用意してくださったと……聞きました」

ありがとうございます、と丁寧に頭を下げられると、なんだか気恥ずかしい。
特別彼のために用意したわけではなく、たまたま彼が来たときに用意できた、と言った方が正しいのだ。

「ここにはもう慣れた?」
「…………はい」

少し間があるのが、やはりと言うべきか。
かつての主をほぼ同じくする信濃藤四郎あたりなら話やすいのではと伝えたこともあるのだけれど、そう簡単な問題でもなかったようだ。

「……そうだ!せっかく春の景趣も用意したし、今度みんなでお花見しよう!」
「お、はな……み?」

本丸の庭に咲く桜の木の下にシートを広げて、お弁当食べながらみんなでどんちゃん騒ぎをするのだ。
そう説明すると、全く想像が出来ない、という反応が返ってきた。

「絶対楽しいよ」
「はぁ……」

なんのためにそんなことを、と白山の顔には書いてある。
自らをまだ道具としてしか認識していないからなのだろうか。
頭を優しく撫でてやり、そのうちわかるよと笑う。

「たのしい……ですか」
「うん、絶対」
「主さまがそこまで仰るなら……」

少し興味が湧きました。
その言葉だけで今は充分だと思った。
刀と剣は違うけれど、この本丸に来た以上は大事な仲間であることには変わらない。
少しでもみんなと楽しい思い出を作りたい。
それだけを願って、もう一度満開の桜を眺めた。



Fin.
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