刀剣乱舞
時空ゲートをくぐり、やってきたのは久しぶりの本丸。
政府に任された現世での仕事に思いの外時間がかかってしまい、長いこと離れることになってしまった。
からからと玄関の戸を開けると、さっそくパタパタと駆け寄ってくる足音が響く。
「おかえりなさーいっ!」
踏み入れるのとほぼ同時に飛びついてきたのは、今剣。
その後に粟田口の短刀たちがまとわりついてくる。
「ったく、何やってたんだよ大将」
「大将が戻ってくるの、ずーっと待ってたんだよ〜」
厚はやれやれと少し困った顔で、信濃は待ちくたびれたと言わんばかりにぎゅーっと抱きついてくる。
それから少し遅れて、大きな体躯が顔を覗かせる。
「あっ、主!おかえり」
内番の畑仕事を終えた、光忠だった。
両手いっぱいにナスやらきゅうりやらを抱えているが、伊達男ぶりは相変わらずだ。
その後ろに、黙って大倶利伽羅が控えている。
主の帰還すら興味なさそうな口ぶりだが、微かに口元が緩んでいたのを見逃さなかった。
「随分遅かったね」
「もー、政府のお偉方がねー……あれこれ押し付けられすぎて、なっかなか解放してくれなかったんだよ〜」
パンプスを脱ぎ捨てて、久方ぶりの日本家屋にほっとする。
ひとまず自室に向かいながら、不在の間ここを仕切ってくれていた光忠にあれこれ現状報告を受ける。
皆、息災であること。
行く前に植えたナスが今日やっと収穫できたこと。
新しい仲間が増えたこと。
そして、本当なら1番に姿を見せるであろうモノのこと。
「どんな顔していいか、わかんなくなっちゃったみたいだよ」
「え、それわたしの台詞じゃないの?」
「多分部屋にいるから、会いに行ってあげて」
持っていた荷物は運んでおいてあげるから、などと執事張りの気配りを見せる光忠のされるがままになり、結局ロクに着替えることも出来ず、ただスーツのジャケットを脱いだだけの姿で通されたのは自室ではなく。
「……つる、まる?」
そっと障子を開けると、胡座をかいたままじっと固まっている白装束。
ゆっくり顔を覗き込もうとした瞬間、ぐらりと身体が傾いだ。
「うっ、わぁ?!」
あまりの衝撃に、素っ頓狂な声が出る。
それでも床に叩きつけられるような痛みが来ないのは、彼に抱きしめられていると気づいたから。
肩口に頭を乗せられて、身動きは取れないけれど。
「……よかっ……た……帰って、きたんだな……」
「……うん。ただいま」
こちらからも彼の背中に腕を回して抱きかえす。
懐かしいぬくもりに、じんわり心が解けていくのがわかった。
「いつ政府の爺どもを焼き討ちにしてやろうか、ずっと考えていた」
「鶴丸にしては随分物騒だなぁ。しかもそれ長谷部くんの台詞だし」
何気ないことで笑い合う。
たたったそれだけのことなのに、心の奥の方がぽかぽかしてくる。
これが幸せということだ。
「本当に、君がいない間は退屈で死にそうだった」
不意に語調を落として囁くような言葉は、きっと彼が誰にも見せずに抱えてきた本音なのだろう。
まるで墓の下にいるようだったと言われてしまえば、さすがに申し訳なさが込み上げてくる。
「そもそも君は、恋仲である俺のことを蔑ろにしすぎだ」
「え?そんなつもりはないけど……」
確かに、鶴丸なら大丈夫。
どんなに遅く帰っても許してくれる、受け止めてくれる、と甘えていた部分がないとはいえない。
「罰として、今夜はとことん付き合ってもらうからな」
不敵な笑みと共に、いつもより少し低めの声で囁かれては、さすがにその意味を理解せずにはいられない。
背中が、ぞくぞくした。
頬が、熱い。
……でも、嬉しい。
政府に任された現世での仕事に思いの外時間がかかってしまい、長いこと離れることになってしまった。
からからと玄関の戸を開けると、さっそくパタパタと駆け寄ってくる足音が響く。
「おかえりなさーいっ!」
踏み入れるのとほぼ同時に飛びついてきたのは、今剣。
その後に粟田口の短刀たちがまとわりついてくる。
「ったく、何やってたんだよ大将」
「大将が戻ってくるの、ずーっと待ってたんだよ〜」
厚はやれやれと少し困った顔で、信濃は待ちくたびれたと言わんばかりにぎゅーっと抱きついてくる。
それから少し遅れて、大きな体躯が顔を覗かせる。
「あっ、主!おかえり」
内番の畑仕事を終えた、光忠だった。
両手いっぱいにナスやらきゅうりやらを抱えているが、伊達男ぶりは相変わらずだ。
その後ろに、黙って大倶利伽羅が控えている。
主の帰還すら興味なさそうな口ぶりだが、微かに口元が緩んでいたのを見逃さなかった。
「随分遅かったね」
「もー、政府のお偉方がねー……あれこれ押し付けられすぎて、なっかなか解放してくれなかったんだよ〜」
パンプスを脱ぎ捨てて、久方ぶりの日本家屋にほっとする。
ひとまず自室に向かいながら、不在の間ここを仕切ってくれていた光忠にあれこれ現状報告を受ける。
皆、息災であること。
行く前に植えたナスが今日やっと収穫できたこと。
新しい仲間が増えたこと。
そして、本当なら1番に姿を見せるであろうモノのこと。
「どんな顔していいか、わかんなくなっちゃったみたいだよ」
「え、それわたしの台詞じゃないの?」
「多分部屋にいるから、会いに行ってあげて」
持っていた荷物は運んでおいてあげるから、などと執事張りの気配りを見せる光忠のされるがままになり、結局ロクに着替えることも出来ず、ただスーツのジャケットを脱いだだけの姿で通されたのは自室ではなく。
「……つる、まる?」
そっと障子を開けると、胡座をかいたままじっと固まっている白装束。
ゆっくり顔を覗き込もうとした瞬間、ぐらりと身体が傾いだ。
「うっ、わぁ?!」
あまりの衝撃に、素っ頓狂な声が出る。
それでも床に叩きつけられるような痛みが来ないのは、彼に抱きしめられていると気づいたから。
肩口に頭を乗せられて、身動きは取れないけれど。
「……よかっ……た……帰って、きたんだな……」
「……うん。ただいま」
こちらからも彼の背中に腕を回して抱きかえす。
懐かしいぬくもりに、じんわり心が解けていくのがわかった。
「いつ政府の爺どもを焼き討ちにしてやろうか、ずっと考えていた」
「鶴丸にしては随分物騒だなぁ。しかもそれ長谷部くんの台詞だし」
何気ないことで笑い合う。
たたったそれだけのことなのに、心の奥の方がぽかぽかしてくる。
これが幸せということだ。
「本当に、君がいない間は退屈で死にそうだった」
不意に語調を落として囁くような言葉は、きっと彼が誰にも見せずに抱えてきた本音なのだろう。
まるで墓の下にいるようだったと言われてしまえば、さすがに申し訳なさが込み上げてくる。
「そもそも君は、恋仲である俺のことを蔑ろにしすぎだ」
「え?そんなつもりはないけど……」
確かに、鶴丸なら大丈夫。
どんなに遅く帰っても許してくれる、受け止めてくれる、と甘えていた部分がないとはいえない。
「罰として、今夜はとことん付き合ってもらうからな」
不敵な笑みと共に、いつもより少し低めの声で囁かれては、さすがにその意味を理解せずにはいられない。
背中が、ぞくぞくした。
頬が、熱い。
……でも、嬉しい。