刀剣乱舞
「次の遠征には、キミが弁当を作ってくれ」
鶴丸が突拍子もないことを言い出すのはいつもの事だけれど、
今回のはさすがに予想していなかった。
「え……?なんで?」
「乱に借りた書物で読んだんだ。恋仲になったら、手作り弁当は当たり前だ、と。」
乱ちゃんは一体どんな本を貸したのかと首を傾げたくなる。
「というわけだ、主。よろしく頼む!」
「頼むって言われても……」
「玉子焼きは甘い方が好きだぞ!」
「えー……」
いつも以上に爽やかさを増した笑顔を振りまきながら、それだけを残して鶴丸は満足そうに部屋を出ていってしまった。
呆然と立ち尽くすわたし。
とはいえ、しらばっくれて次の遠征時になにもなかったら、それはそれで面倒になることは目に見えているので、大きなため息をついてからゆっくりと立ち上がる。
そして、こういう時に頼りになる刀のところへと急いだ。
「それは……鶴さんらしいね」
夕食の仕込みをしながら、光忠はくすくすと笑う。
その光景、手に取るようにわかるよ、と。
「だから、なんとかしないといけないんだけど……」
わたしでも作れるものは果たしてあるのだろうか。
「いきなり豪勢なものっていうのは、鶴さんもさすがに考えてないと思うよ。」
それこそ、握り飯でもいいんじゃない?
わたしの実力を知っているからこそ、光忠は思いの外ハードルを下げた提案をしてくれた。
「うーん……そう、だよね。」
分不相応なものを用意したところで、聡い鶴丸には絶対光忠の協力があることは見抜かれてしまうだろう。
なんとか内容が決まったところで、食後に厨を使うことを伝えて、そのまま夕食の手伝いをすることにした。
「はい、鶴丸。」
「……へ?」
真っ白な戦装束に身を包んだ彼の前に、竹の葉で包んだ件の弁当を差し出す。
弁当といえば聞こえはいいが、要するにただの握り飯だが。
年のため、玉子焼きは奇跡的に成功したので一緒に入れてある。
「あんたが作れって言ったんでしょーが。」
「いや……まさか本当に作ってくれるとは……こりゃ驚きだぜ。」
大したものじゃないから絶対に期待しないで。
それだけは念押ししておく。
鶴丸もわたしの料理の腕前は大方知っているはずなので、中身の予想はついているかもしれない。
「ありがたくいただくよ。」
嬉しそうに受け取ってもらえたから、今回はこれで良しとしよう。
「ちゃんと帰ってきて、感想聞かせてよね。」
「もちろんだとも!」
このお礼は帰ってきてからな。
いたずらっ子みたいな笑みを向けられた。
はたして、一体どんな驚きがもたらされるのやら。
怖い反面、楽しみでもある。
「あー!鶴丸さん愛妻弁当じゃん!」
「いいだろう!」
時空転送装置を潜る直前、鶴丸は乱ちゃんとそんなやりとりをしていた。
そんな楽しそうな姿を見送ってから、わたしも本丸へと戻った。
鶴丸が突拍子もないことを言い出すのはいつもの事だけれど、
今回のはさすがに予想していなかった。
「え……?なんで?」
「乱に借りた書物で読んだんだ。恋仲になったら、手作り弁当は当たり前だ、と。」
乱ちゃんは一体どんな本を貸したのかと首を傾げたくなる。
「というわけだ、主。よろしく頼む!」
「頼むって言われても……」
「玉子焼きは甘い方が好きだぞ!」
「えー……」
いつも以上に爽やかさを増した笑顔を振りまきながら、それだけを残して鶴丸は満足そうに部屋を出ていってしまった。
呆然と立ち尽くすわたし。
とはいえ、しらばっくれて次の遠征時になにもなかったら、それはそれで面倒になることは目に見えているので、大きなため息をついてからゆっくりと立ち上がる。
そして、こういう時に頼りになる刀のところへと急いだ。
「それは……鶴さんらしいね」
夕食の仕込みをしながら、光忠はくすくすと笑う。
その光景、手に取るようにわかるよ、と。
「だから、なんとかしないといけないんだけど……」
わたしでも作れるものは果たしてあるのだろうか。
「いきなり豪勢なものっていうのは、鶴さんもさすがに考えてないと思うよ。」
それこそ、握り飯でもいいんじゃない?
わたしの実力を知っているからこそ、光忠は思いの外ハードルを下げた提案をしてくれた。
「うーん……そう、だよね。」
分不相応なものを用意したところで、聡い鶴丸には絶対光忠の協力があることは見抜かれてしまうだろう。
なんとか内容が決まったところで、食後に厨を使うことを伝えて、そのまま夕食の手伝いをすることにした。
「はい、鶴丸。」
「……へ?」
真っ白な戦装束に身を包んだ彼の前に、竹の葉で包んだ件の弁当を差し出す。
弁当といえば聞こえはいいが、要するにただの握り飯だが。
年のため、玉子焼きは奇跡的に成功したので一緒に入れてある。
「あんたが作れって言ったんでしょーが。」
「いや……まさか本当に作ってくれるとは……こりゃ驚きだぜ。」
大したものじゃないから絶対に期待しないで。
それだけは念押ししておく。
鶴丸もわたしの料理の腕前は大方知っているはずなので、中身の予想はついているかもしれない。
「ありがたくいただくよ。」
嬉しそうに受け取ってもらえたから、今回はこれで良しとしよう。
「ちゃんと帰ってきて、感想聞かせてよね。」
「もちろんだとも!」
このお礼は帰ってきてからな。
いたずらっ子みたいな笑みを向けられた。
はたして、一体どんな驚きがもたらされるのやら。
怖い反面、楽しみでもある。
「あー!鶴丸さん愛妻弁当じゃん!」
「いいだろう!」
時空転送装置を潜る直前、鶴丸は乱ちゃんとそんなやりとりをしていた。
そんな楽しそうな姿を見送ってから、わたしも本丸へと戻った。