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刀剣乱舞

なぜだ、わからない。

この世に生み出されてからずっと、お前は贋作だと満足に扱われたことのない俺を、あいつはやたらと使いたがる。
しかも、軽傷くらいの傷でも、この世の終わりのような顔で手入れ部屋に連れ込まれる。

一体、なんなんだ。

「……なぁ、主。」
「なんですか?」

ただ呼んだだけなのに、満面の笑みが向けられる。
……眩しい。

「どうしてお前は、俺を近侍に選んだんだ。」

どうせお前だって、贋作だと思っているんだろう。
自虐的に吐いて捨てると、なぜか主は首を横に振った。

「わたしにとっては、あなたが本物だろうが、贋作だろうが関係ありません。」

そんな風に言われたことなど一度もなくて、どう答えればいいのか、わからない。

「ただあなたが、山姥切国広という刀が大事だから、傍に置いているのです。」

それではだめですか?
そう、主は笑った。
だめな、わけがない。
傑作だと言われる以上の気持ちが、上手く言葉にならないまま溢れてくる。
ただ思うのは、この主でよかった、と。

「そ、そんな恥ずかしいこと、よく堂々と言えるものだな……。」

被り物を目深に降ろして、顔だけは見られないようにする。
朱に染まった顔など、見せられるわけがない。

「それだけあなたが大事だから、ですよ。」

これからもよろしくお願いします。
なぜか主の方から頭を下げられてしまった。
本当にこいつのことはわからない。

けれど。

こいつの為なら、いくらでも力を振るおう。
この名に恥じぬように。
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