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FINAL FANTASY7

その日は珍しく、強い雨が降っていた。
空も溜息をつきたくなるほどの曇天。
とはいえ、閉鎖されたスラムの天気はいつも同じだ。
薄暗いまま、変わらない。
変わらないと、思っていたのに。


突然、教会の戸を荒く叩く音が響き渡った。
ここに顔を出すのはツォンかあの人くらいしかいない。
それならば何も言わずに入ってくるはず。
不安が、募る。

(誰、だろう……)

恐る恐る立て付けの悪い戸を開く。
そこには、黄金の髪に空色の瞳をした少年が、ずぶ濡れの状態で立ちすくんでいた。

「……アンタが……エアリス、か?」
「そう……です」
「……よかった。」

安堵したようにひと息つくと、少年はどさりとその場に背負っていたものを下ろす。
ところどころ銃弾でも受けたのか、服は穴が開いている。
血が滲んで赤黒くなっている箇所も少なくはない。

「この、人は……」
「俺はちゃんと届けたからな、ザックス。」

それだけを吐き捨てるようにして、少年は踵を返していく。
いくら引き留めても、振り返ることすらしてくれない。
預けられた身を放っておくことも出来ず、混乱する頭を落ち着かせることに必死だった。



(……帰ってきた……)

ベッドに寝かせたその顔を改めて見ると、いろいろな感情が溢れて止まらない。
髪、ずいぶん伸びた。
頬の傷、どうしたの。
いままでどこにいたの。
聞きたいことは、たくさんあるけれど。
それよりも、もっと。

「……あ……」

ふと、彼がゆっくりと瞼を持ちあげた。
焦点の定まらない空色の瞳が、次第にクリアになってゆき。
記憶の中と変わらない、ふにゃりとした柔らかい笑顔になった。
緩慢に半身を起こすと、彼はエアリスをそっと抱き寄せた。

「……ザッ……クス……!」

どんなに会いたくても。
どんなに手紙を書いても。
この気持ちはもう二度と届かないと思っていたのに。

「……ただいま、エアリス。」

視線がぶつかれば、もう言葉は必要なかった。
どちらからともなく、重なる唇。
何度も、何度も。
包まれたぬくもりが、やがて幸せに変わる。

「……おかえり、ザックス。」



Fin.
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