ヒカルの碁
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大学のサークルで久しぶりに飲み会があったから、ついつい羽目を外して帰りが遅くなってしまった。
午前様とまではいかないけれど、日付はすっかり更新されている。
さすがに彼はもう寝てると思ってこそっそりドアを開けてリビングにやってきたのだけど。
「あれ……」
碁盤を前にして、何度も使ってボロボロになった棋譜を片手にソファでヒカルは寝落ちしていた。
普段は大人びた表情をするようになったとはいえ、こういうところはまだまだ子どもっぽい。
ーもしかして、待っててくれたのかな?
遅くなりそうだから先に寝ててと連絡は入れておいたはずだけれど。
もしかしたら集中しすぎてわたしからの連絡は未読のままなのかもしれない。
どちらにせよ悪いことをしてしまったなぁと幾ばくかの罪悪感を感じていると、徐に彼が身動ぎして半身を起こした。
「……?」
「ただいま。ごめんね、遅くなって」
「……っ…… 千颯!」
未だ夢現なのか、突然ヒカルの腕が伸びてきて、そのまま中にきつく抱きしめられた。
いつもは恥ずかしいとかいろいろ勝手に言い訳をくっつけてこんなことしてくれないから、思わず固まってしまった。
「……ヒカ、ル?」
「……よかった……帰ってきた……」
置いていかれるのはもう懲り懲りだ。
今にも泣いてしまいそうな妙に切なげなその声に、彼の過去に一体何があったのかと心配になる。
「遅くなるって連絡したけど……見てない?」
「え?なんだよそれ」
「やっぱり」
慌ててヒカルはスマホを確認すると、わたしからのメールを見つけたらしく、盛大に安堵のため息をついた。
「あー……ごめん。オレすげーかっこ悪いじゃん」
そしてバツの悪そうな表情で、目の前の碁石を碁笥に片付け始めた。
その背中がしょげた仔犬みたいに見えて、無性に愛おしくなった。
「ヒカル、ただいま」
今度はわたしの方から彼の背中に抱きついてみる。
わたしだって普段はこんなことしないから恥ずかしいけど、酔った勢いということにしておこう。
「…… 千颯、おかえり」
振り向きざまに、ほんの一瞬唇が触れ合った。
お互いの視線が交ざり、どちらからともなく吹き出して笑った。
恥ずかしいね、なんて言いながら。
結局もう1回。
あと1回。
くだらない理由をつけては、何度も何度も触れるだけのキスを繰り返して、笑い合った。
午前様とまではいかないけれど、日付はすっかり更新されている。
さすがに彼はもう寝てると思ってこそっそりドアを開けてリビングにやってきたのだけど。
「あれ……」
碁盤を前にして、何度も使ってボロボロになった棋譜を片手にソファでヒカルは寝落ちしていた。
普段は大人びた表情をするようになったとはいえ、こういうところはまだまだ子どもっぽい。
ーもしかして、待っててくれたのかな?
遅くなりそうだから先に寝ててと連絡は入れておいたはずだけれど。
もしかしたら集中しすぎてわたしからの連絡は未読のままなのかもしれない。
どちらにせよ悪いことをしてしまったなぁと幾ばくかの罪悪感を感じていると、徐に彼が身動ぎして半身を起こした。
「……?」
「ただいま。ごめんね、遅くなって」
「……っ…… 千颯!」
未だ夢現なのか、突然ヒカルの腕が伸びてきて、そのまま中にきつく抱きしめられた。
いつもは恥ずかしいとかいろいろ勝手に言い訳をくっつけてこんなことしてくれないから、思わず固まってしまった。
「……ヒカ、ル?」
「……よかった……帰ってきた……」
置いていかれるのはもう懲り懲りだ。
今にも泣いてしまいそうな妙に切なげなその声に、彼の過去に一体何があったのかと心配になる。
「遅くなるって連絡したけど……見てない?」
「え?なんだよそれ」
「やっぱり」
慌ててヒカルはスマホを確認すると、わたしからのメールを見つけたらしく、盛大に安堵のため息をついた。
「あー……ごめん。オレすげーかっこ悪いじゃん」
そしてバツの悪そうな表情で、目の前の碁石を碁笥に片付け始めた。
その背中がしょげた仔犬みたいに見えて、無性に愛おしくなった。
「ヒカル、ただいま」
今度はわたしの方から彼の背中に抱きついてみる。
わたしだって普段はこんなことしないから恥ずかしいけど、酔った勢いということにしておこう。
「…… 千颯、おかえり」
振り向きざまに、ほんの一瞬唇が触れ合った。
お互いの視線が交ざり、どちらからともなく吹き出して笑った。
恥ずかしいね、なんて言いながら。
結局もう1回。
あと1回。
くだらない理由をつけては、何度も何度も触れるだけのキスを繰り返して、笑い合った。
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