ヒカルの碁
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『和谷義高プロ 結婚』
そんなワードが一時的にネット上でトレンドになるほどの衝撃ニュースが走ってから、数ヶ月過ぎた頃。
もうすでに騒動はひと段落して、騒がれることはほとんどない。
たまに彼の対局模様が中継された時に、一部のファンが左手の薬指に反応して呟きサイトが盛り上がるくらい。
概ね好意的に世間は受け止めているので、わたしも同じように見守っているのだけれど。
長年ずっと彼のことを応援してきた身としては、他所の女に取られたと思ってしまう部分も心の奥底にはまだ燻っている。
(あっ、出てきた……!)
棋院のエレベーターから彼の姿が現れると、未だにきゅんと心が跳ねてしまう。
明からさまな出待ちは恥ずかしいしルール違反かなとも思うので、ロビーでなんとなく時間を潰していますという雰囲気を醸し出して、横目にちらりと彼を見る。
あぁ、今日もかっこいいな、なんて。
「待たせて悪い!感想戦長引いちゃってさ……」
「ううん、大丈夫!私もさっき来たところだし。」
エレベーターを降りてきた彼にぱたぱたと駆け寄っていく、身知らぬ女の人。
誰よ、とつい無意識のうちに睨み付けてしまった。
でも、あることに気づいてしまってすぐに心の中で振り上げた拳をそっと下ろす。
幸せそうに微笑み合う二人には、揃いの指輪が左手の薬指に輝いていた。
(……なにその顔。当たり前だけど、勝ち目なんてないじゃん。)
大きくため息をついて、肩を落とす。
二人だけのセカイを見せつけられて、為す術もない。
まぁ、彼が幸せそうなら良いか。
言葉にならない想いは空気に溶けて、その場に霧散した。
くるりと身を翻して、わたしは棋院を後にする。
自分でも不思議だなとは思ったが。
思いの外、足取りは重くなかった。
そんなワードが一時的にネット上でトレンドになるほどの衝撃ニュースが走ってから、数ヶ月過ぎた頃。
もうすでに騒動はひと段落して、騒がれることはほとんどない。
たまに彼の対局模様が中継された時に、一部のファンが左手の薬指に反応して呟きサイトが盛り上がるくらい。
概ね好意的に世間は受け止めているので、わたしも同じように見守っているのだけれど。
長年ずっと彼のことを応援してきた身としては、他所の女に取られたと思ってしまう部分も心の奥底にはまだ燻っている。
(あっ、出てきた……!)
棋院のエレベーターから彼の姿が現れると、未だにきゅんと心が跳ねてしまう。
明からさまな出待ちは恥ずかしいしルール違反かなとも思うので、ロビーでなんとなく時間を潰していますという雰囲気を醸し出して、横目にちらりと彼を見る。
あぁ、今日もかっこいいな、なんて。
「待たせて悪い!感想戦長引いちゃってさ……」
「ううん、大丈夫!私もさっき来たところだし。」
エレベーターを降りてきた彼にぱたぱたと駆け寄っていく、身知らぬ女の人。
誰よ、とつい無意識のうちに睨み付けてしまった。
でも、あることに気づいてしまってすぐに心の中で振り上げた拳をそっと下ろす。
幸せそうに微笑み合う二人には、揃いの指輪が左手の薬指に輝いていた。
(……なにその顔。当たり前だけど、勝ち目なんてないじゃん。)
大きくため息をついて、肩を落とす。
二人だけのセカイを見せつけられて、為す術もない。
まぁ、彼が幸せそうなら良いか。
言葉にならない想いは空気に溶けて、その場に霧散した。
くるりと身を翻して、わたしは棋院を後にする。
自分でも不思議だなとは思ったが。
思いの外、足取りは重くなかった。