ヒカルの碁
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オレの世界はいつだって碁が中心で、愛だの恋だのなんてのは全部二の次にして置いてきた。
強くなって、少しでも上に行くために必死だったから。
「……うわ、雨すげーな……」
棋院を出ると、外は季節外れの大雨。
天気予報では今日は崩れないと言っていたから、傘なんて持ってきていない。
宛になりそうな伊角さんはまだ対局中だし、駅まで走るにはちょっと距離がある。
さて、どうしたものか。
思案していると、ふと隣からも落胆の声が響いた。
「うわー……雨やば」
声の主は、院生時代に同じ一組で戦っていた千颯だった。
ただ、彼女の手にはちゃんと折りたたみ傘が握られていた。
「お前、そういうの持ってるタイプだったんだな」
「は?わたし結構しっかりしてるよ?」
「院生の時は一緒にずぶ濡れで駅までダッシュしてた奴が何言ってんだよ」
「そんなのずっと昔の話じゃん」
ドヤ顔で言うそのセリフは子どもっぽいのに、ふとした横顔に鼓動が跳ねた。
こいつ、こんなに綺麗だったっけ。
「その様子だと、あんた傘持ってないんでしょ」
「べ、別にそういうわけじゃ……」
「駅まで入ってく?これ大きめだから二人なら余裕あると思うけど」
昔のオレだったら、余計なお世話だとか言って断っていただろう。
でも今は、もう少しでいいから二人の時間を終わらせたくなくて、プライドはさて置き、お言葉に甘えさせてもらうことにした。
「傘、オレが持つよ」
「え?いいよ」
「ちげーよ!オレが濡れるから言ってんの」
「あ、ごめん!」
というのは口実で。
自分は濡れたところで気にしないけど、やっぱ千颯が濡れるのは、ダメだろう。
気づかれないようにこっそり傘を傾ける。
季節外れの雨なんて厄介だと思っていたけれど。
案外悪いことばかりでもないらしい。
これがひとつの始まりを迎えることに気づくのは、もう少し先の話。
強くなって、少しでも上に行くために必死だったから。
「……うわ、雨すげーな……」
棋院を出ると、外は季節外れの大雨。
天気予報では今日は崩れないと言っていたから、傘なんて持ってきていない。
宛になりそうな伊角さんはまだ対局中だし、駅まで走るにはちょっと距離がある。
さて、どうしたものか。
思案していると、ふと隣からも落胆の声が響いた。
「うわー……雨やば」
声の主は、院生時代に同じ一組で戦っていた千颯だった。
ただ、彼女の手にはちゃんと折りたたみ傘が握られていた。
「お前、そういうの持ってるタイプだったんだな」
「は?わたし結構しっかりしてるよ?」
「院生の時は一緒にずぶ濡れで駅までダッシュしてた奴が何言ってんだよ」
「そんなのずっと昔の話じゃん」
ドヤ顔で言うそのセリフは子どもっぽいのに、ふとした横顔に鼓動が跳ねた。
こいつ、こんなに綺麗だったっけ。
「その様子だと、あんた傘持ってないんでしょ」
「べ、別にそういうわけじゃ……」
「駅まで入ってく?これ大きめだから二人なら余裕あると思うけど」
昔のオレだったら、余計なお世話だとか言って断っていただろう。
でも今は、もう少しでいいから二人の時間を終わらせたくなくて、プライドはさて置き、お言葉に甘えさせてもらうことにした。
「傘、オレが持つよ」
「え?いいよ」
「ちげーよ!オレが濡れるから言ってんの」
「あ、ごめん!」
というのは口実で。
自分は濡れたところで気にしないけど、やっぱ千颯が濡れるのは、ダメだろう。
気づかれないようにこっそり傘を傾ける。
季節外れの雨なんて厄介だと思っていたけれど。
案外悪いことばかりでもないらしい。
これがひとつの始まりを迎えることに気づくのは、もう少し先の話。