ヒカルの碁
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<残念!スキルが足りない!>
「そろそろ、少し休憩しようか」
ノートに走らせていたペンを止めて、ふっと息をつくアキラくん。
それに合わせてわたしも同じく教科書を閉じた。
彼女という立場を利用して、一緒に宿題をやろうという提案が
まさか受け入れてもらえるとは思わなかった。
そういうものは一人でやるものだよって平然と言われるものだと思っていたから。
それどころか、勉強見てあげるよと彼の方から言って来た。
すでにプロ棋士という将来を決めて受験のしがらみから離れた彼に教わるのも
変な話だとは思ったが、ごくごく一般的な学力しかないわたしにとっては、
藁をも掴む勢いでその申し出に縋った。
そんなわけで、アキラくんの家にお邪魔して勉強を教わっていたわけだけれど、
さすがに教わりっぱなしというのも何だか気が引ける。
どうしようかと密かに思案していると、急に彼がしまったと困り顔を作った。
「今日、お母さん留守なんだった」
別に何を困るのかと思ったけれど、お昼ご飯が何もないんだというアキラくんの言葉で事の深刻さを思い知る。
普通ならここで、じゃぁわたしがと名乗りを上げるところなのだろう。
だが、わたしの料理スキルは自慢ではないが、壊滅的だ。
まともに作ったことがあるのは卵かけご飯くらい。
「仕方ない、店屋物でもいいかな?」
さらりと出前を頼もうとするあたり、さすがアキラくん。
中学生でその発想はなかなか出ないわ。
何か食べたいものは?と、いかにも高級そうなお品書きをいくつも出してくる。
何人もの門下生を抱える彼のお父さんは、厳格な外見とは裏腹に義理と人情に厚い人なので、
門下生の昇段などがあればちょくちょく豪華に出前を取ってお祝いするらしい。
それでいつの間にか増えてしまったんだとアキラくんは苦笑した。
「わ、わたしはなんでもいいよ」
「うーんそう言われても」
どこも食べ飽きてるんだよなぁみたいな顔しないで!
ものすごくわたしが切ない!
「じゃぁ、外に出ようか」
「へ?」
「千颯さんと一緒に、行ってみたいところがあるんだ」
年相応にわくわく目を輝かせる彼に圧倒されて、あれよあれよという間に連れ出される。
二人で出かけるのも久しぶりだね、などとこれからデートに行く
カップルみたいなことを言われては、もう反論のひとつも出てこない。
せめて平凡な中学生のわたしでも入れる場所にしてと必死でお願いする。
正直なところ、お小遣い前でそんなに持ち合わせがない。
いろいろな意味でどきどきしながら、彼の隣を歩いた。
そうして連れて行かれたわたしが、
駅前のファーストフード店の前で最大級の安堵のため息をつくことになるのは、もう少し先の話。
「そろそろ、少し休憩しようか」
ノートに走らせていたペンを止めて、ふっと息をつくアキラくん。
それに合わせてわたしも同じく教科書を閉じた。
彼女という立場を利用して、一緒に宿題をやろうという提案が
まさか受け入れてもらえるとは思わなかった。
そういうものは一人でやるものだよって平然と言われるものだと思っていたから。
それどころか、勉強見てあげるよと彼の方から言って来た。
すでにプロ棋士という将来を決めて受験のしがらみから離れた彼に教わるのも
変な話だとは思ったが、ごくごく一般的な学力しかないわたしにとっては、
藁をも掴む勢いでその申し出に縋った。
そんなわけで、アキラくんの家にお邪魔して勉強を教わっていたわけだけれど、
さすがに教わりっぱなしというのも何だか気が引ける。
どうしようかと密かに思案していると、急に彼がしまったと困り顔を作った。
「今日、お母さん留守なんだった」
別に何を困るのかと思ったけれど、お昼ご飯が何もないんだというアキラくんの言葉で事の深刻さを思い知る。
普通ならここで、じゃぁわたしがと名乗りを上げるところなのだろう。
だが、わたしの料理スキルは自慢ではないが、壊滅的だ。
まともに作ったことがあるのは卵かけご飯くらい。
「仕方ない、店屋物でもいいかな?」
さらりと出前を頼もうとするあたり、さすがアキラくん。
中学生でその発想はなかなか出ないわ。
何か食べたいものは?と、いかにも高級そうなお品書きをいくつも出してくる。
何人もの門下生を抱える彼のお父さんは、厳格な外見とは裏腹に義理と人情に厚い人なので、
門下生の昇段などがあればちょくちょく豪華に出前を取ってお祝いするらしい。
それでいつの間にか増えてしまったんだとアキラくんは苦笑した。
「わ、わたしはなんでもいいよ」
「うーんそう言われても」
どこも食べ飽きてるんだよなぁみたいな顔しないで!
ものすごくわたしが切ない!
「じゃぁ、外に出ようか」
「へ?」
「千颯さんと一緒に、行ってみたいところがあるんだ」
年相応にわくわく目を輝かせる彼に圧倒されて、あれよあれよという間に連れ出される。
二人で出かけるのも久しぶりだね、などとこれからデートに行く
カップルみたいなことを言われては、もう反論のひとつも出てこない。
せめて平凡な中学生のわたしでも入れる場所にしてと必死でお願いする。
正直なところ、お小遣い前でそんなに持ち合わせがない。
いろいろな意味でどきどきしながら、彼の隣を歩いた。
そうして連れて行かれたわたしが、
駅前のファーストフード店の前で最大級の安堵のため息をつくことになるのは、もう少し先の話。