ヒカルの碁
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港に広がる夜景を眼下に見下ろした窓際の席。
カップル用なのか大きな横長のソファがひとつ、個室の中に用意されている。
戸惑いがちに並んで腰を下ろすと、一礼したウェイターが
本日のおすすめカクテルでございますと静かにグラスを置いて出て行った。
「じゃぁ、乾杯」
からんとグラスが触れ合って乾いた音が響く。
西洋では、これは教会の鐘に例えられて悪魔払いの意味があるらしい。
そんな雑学を披露すると、伊角くんは口に含んだカクテルを飲み干して
そっと肩を抱き寄せてくる。
包み込むように頭を撫でられて、アルコールの力も相まっていつも以上に心地がいい。
「これ、なんていうカクテル?すごく美味しい」
「アレキサンダー、ですよ」
かつてイギリスの王が王妃様に捧げたという逸話があるらしい。
伊角くんこそ物知りねと褒めると、貴女ほどじゃないですといつもの謙遜。
本当はさっきこっそり調べましたなんて、悪戯っ子みたいな顔で笑った。
そして、どちらからともなくそんな雰囲気になって、唇を重ねた。
個室なのをいいことに、人目も憚らず、眩暈がするほど甘い甘い、アルコールの味。
お互いがお互いを貪るように熱を重ねて、離れる頃には二人を繋ぐ銀糸がぷつりと切れた。
「・・・意外だなぁ。伊角くんって、もっとお堅い人だと思ってたのに」
「幻滅、しました?」
「ううん、むしろその逆」
好きになっちゃいそう、というのは冗談半分本気半分。
その程度だったのに。
「・・・それ、本気にしますよ?」
不敵に笑う彼が、わたしの知らないオトコの顔をしていた。
その言葉通り、ゆっくりとソファに押し倒されて首筋を舌でなぞられる。
火照った身体は正直で、いちいち触れられたところが反応してしまう。
・・・歳下のくせに。
こんなこと、許された関係ではないのかもしれない。
私たちの関係には、なにひとつ名前がない。
もしかしたら、次の瞬間には別々に店を出て、もう二度と会わないのかもしれない。
もし、そうだとしたら。
あと少しだけ、もう少しだけ。
・・・もっと。
お互いがお互いを求めずにはいられなかった。