ヒカルの碁
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「おねがいしまーす!」
通りがかりに絶妙なタイミングで差し出されたものを、半ば反射的に受け取ってしまった。
どうせただのポケットティッシュなので、さして気にも留めないのだが。
目に飛び込んできた広告に思わずうっと変な声が出てしまった。
「あ?どーした?」
「いや、なんでも・・・」
慌てて上着のポケットにねじ込むが、和谷は目敏くそれを見逃さなかった。
おまけに、こちらの反応を見て大体のことを察したようだ。
にやぁっと不適な笑みを浮かべながら、強引に例のブツを表に出させされる。
「ははぁ~。伊角さん、こういう人が好みなんだ?」
広告に書かれていた、オレが挙動不審になってしまった元凶。
身体のラインがはっきりとわかるシャンパンゴールドのドレスを纏い、いまにもはちきれんばかりの豊満な胸をこれでもかと強調したポーズで写る女性の写真。
つまりこれは、そういう夜の店の広告だったわけで。
「ちっ、違う!これは・・・」
「へぇ~?あ、そういえばあの子も・・・」
「ばっばか!何言ってるんだよ!」
和谷は今オレが付き合っている千颯を想像したのだろうが、そんな下世話な想像に大事な彼女を巻き込ませるわけにはいかない。
・・・のだが、一瞬だけ彼女にあのドレスを脳内で着せてしまった。
そんな自分を一発殴ってやりたい。
「そっかぁ~伊角さんがこーゆーのが・・・」
「和谷!やめなさい!」
いくら制しても、和谷は他人事だと思ってにやにや楽しんでいる。
挙句の果てには、オトナのオモチャでも買いに行く?などと言い出した。
「だいたい、未成年なんだから買えるわけ・・・」
「伊角さん18歳以上なんだから買えるだろ」
はっと気づいて、確かにと納得してしまった。
でもそれすら和谷の思うつぼで、オレの反応を見ながら腹を抱えて笑っている。
さすがにこのまま黙って遊ばれるのも癪なので、広告だけ抜き取って和谷のポケットにねじ込んでやった。
「おっ、おい!!伊角さん!!」
「散々遊んでくれたお返しだよ」
これが見つかれば、受け取ったポケットティッシュより数倍タチが悪い。
お互いにこれから彼女と会うのに、修羅場になることは容易に想像がつく。
「あーもう!!どっかにゴミ箱・・・」
慌てて辺りを見回して、運良く見つけたコンビニに一目散に駆けて行った。
まったく、なんとも下世話な遊びに振り回されてしまったものだ。
やれやれとため息をひとつつく。
せめてもの救いは、あの写真の女性の顔がひよりには似ていなかったこと。
もしも似ていたら・・・。
想像するだけで、なにやらいけない気分になる。
和谷が戻ってくるまでに、さっさとこの煩悩を振り払わなければ。