ヒカルの碁
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「・・・はぁ」
何度目かの大きなため息をついて、だんまりを決め込むスマホを覗き込む。
相変わらず慎一郎さんからの連絡は、ない。
少し前に大きなタイトルのリーグ戦が終わったとかなんとか言っていたけれど、やっぱりなんだかんだでプロは忙しいらしい。
最近は特に、テレビで大盤解説をしている姿をよく見るようになった。
ほんの少し前まで一緒にファーストフード店でハンバーガーを食べていた慎一郎さんが、だ。
いつの間にか随分遠い世界の人になってしまった。
ーたまには声くらい、聴きたいな
迷惑かもしれないけれど。
これはわたしのわがままだけれど。
躊躇いがちに彼の連絡先を開いて、通話ボタンを押す。
その二秒前。
いままでうんともすんとも言わなかったスマホが、突然着信を告げながら盛大に震えた。
慌てていたら不用意に通話を押してしまって、まだ心の準備も出来ていないのに画面の向こうから義高の声が響いてきた。
『千颯?今、ちょっといいか?』
「う、うん・・・大丈夫・・・」
声、上ずってないかな。
不自然じゃないかな。
別に見えるわけでもないのに、空いた右手は髪を整えてしまう。
『最近、全然会えなくてごめん』
「忙しいんでしょ?仕方ないよ」
『そう、なんだけどさ・・・』
本当に申し訳なさそうな表情をしているのが声でわかる。
「それより、どうしたの?電話なんて珍しいね」
普段の連絡は、だいたいLINE。
一言だけの日もあるけれど、メッセージのやりとりは1日も欠かしたことはない。
『急に、千颯の声、聞きたくなってさ』
「えっ・・・?」
うそ、と思わず言ってしまった。
同じことを思っていたなんて。
驚きが電話越しに伝わったようで、しばらくの沈黙の後、同じタイミングで笑いが零れた。
『いつでも電話してきていいんだぞ』
「でも、対局とかいろいろ・・・」
『それもあるけど、お前の声直接聞けた方が俺も頑張れる』
「慎一郎・・・さん・・・」
本当は、あなたの生活にわたしは必要ないんじゃないかと思ってた。
碁のこともさっぱりわからないし、近くで支えてあげることも出来ない。
ただのお荷物なんじゃないかって。
でも、そうじゃないんだよって言葉にしてもらえただけで、ふわりと気持ちが軽くなる。
「そんなこと言われたら、毎日電話しちゃうかもよ?」
『ははっ、いいよ。待ってる』
穏やかな声に、じんわりあったかくなった。
離れていても、ちゃんと繋がってるんだってわかったから。
「・・・ねぇ、慎一郎さん」
『ん?』
いつもは照れて言えない言葉だけど。
今日は言えそうな気がする。
内緒話をするように潜めて、そっと四文字を声に乗せた。
何度目かの大きなため息をついて、だんまりを決め込むスマホを覗き込む。
相変わらず慎一郎さんからの連絡は、ない。
少し前に大きなタイトルのリーグ戦が終わったとかなんとか言っていたけれど、やっぱりなんだかんだでプロは忙しいらしい。
最近は特に、テレビで大盤解説をしている姿をよく見るようになった。
ほんの少し前まで一緒にファーストフード店でハンバーガーを食べていた慎一郎さんが、だ。
いつの間にか随分遠い世界の人になってしまった。
ーたまには声くらい、聴きたいな
迷惑かもしれないけれど。
これはわたしのわがままだけれど。
躊躇いがちに彼の連絡先を開いて、通話ボタンを押す。
その二秒前。
いままでうんともすんとも言わなかったスマホが、突然着信を告げながら盛大に震えた。
慌てていたら不用意に通話を押してしまって、まだ心の準備も出来ていないのに画面の向こうから義高の声が響いてきた。
『千颯?今、ちょっといいか?』
「う、うん・・・大丈夫・・・」
声、上ずってないかな。
不自然じゃないかな。
別に見えるわけでもないのに、空いた右手は髪を整えてしまう。
『最近、全然会えなくてごめん』
「忙しいんでしょ?仕方ないよ」
『そう、なんだけどさ・・・』
本当に申し訳なさそうな表情をしているのが声でわかる。
「それより、どうしたの?電話なんて珍しいね」
普段の連絡は、だいたいLINE。
一言だけの日もあるけれど、メッセージのやりとりは1日も欠かしたことはない。
『急に、千颯の声、聞きたくなってさ』
「えっ・・・?」
うそ、と思わず言ってしまった。
同じことを思っていたなんて。
驚きが電話越しに伝わったようで、しばらくの沈黙の後、同じタイミングで笑いが零れた。
『いつでも電話してきていいんだぞ』
「でも、対局とかいろいろ・・・」
『それもあるけど、お前の声直接聞けた方が俺も頑張れる』
「慎一郎・・・さん・・・」
本当は、あなたの生活にわたしは必要ないんじゃないかと思ってた。
碁のこともさっぱりわからないし、近くで支えてあげることも出来ない。
ただのお荷物なんじゃないかって。
でも、そうじゃないんだよって言葉にしてもらえただけで、ふわりと気持ちが軽くなる。
「そんなこと言われたら、毎日電話しちゃうかもよ?」
『ははっ、いいよ。待ってる』
穏やかな声に、じんわりあったかくなった。
離れていても、ちゃんと繋がってるんだってわかったから。
「・・・ねぇ、慎一郎さん」
『ん?』
いつもは照れて言えない言葉だけど。
今日は言えそうな気がする。
内緒話をするように潜めて、そっと四文字を声に乗せた。