ヒカルの碁
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「もー!聞いてよー!」
どかどかと無遠慮に部屋に入り込んで、ワンルームの狭いリビングにどっかと座り込む。
家の主はといえば、またかと半ば諦めたような表情で、いつもと同じように、わたしの好きな銘柄の缶チューハイを差し出してくれた。
「また彼氏と別れたんだけどさー」
「今回は三ヶ月か……。まぁ、長続きした方じゃね?」
ぐさりと刺さるような言い方に、当の本人はわたしのことなんてそっちのけで碁盤にぱちぱち石を置いている。
こっちはこんなにも落ち込んでいるというのに、棋譜並べなんて随分いいご身分だと、深夜に押しかけている迷惑な自分のことは棚に上げて、わたしはぶすっとふくれっ面を作った。
「今度こそいけると思ったのにさぁ……」
相手は職場の合コンで知り合った人だった。
容姿もそれなりに整っていたし、人当たりもすごく良い人だった。
この人ならって思えたのに。
わたしの部屋に碁盤が置いてあるのを見て、それはそれは見た事のない表情で、ありとあらゆる言葉で馬鹿にしてきたのだ。
そこまで否定されては我慢もできず、横っ面を引っぱたいて、そのままの勢いで彼を追い出し、わたしも自宅を飛び出してきた。
そんな時の行く宛といえば、ここしかない。
「あいつの家だって、引くほどたくさん巨乳美少女フィギュア置いてあったのにさ……」
個人の趣味にとやかく言うやつは最低だ。
溢れ出るままにぶちぶちと文句をこぼしていると、不意にそれを遮るように首根っこを掴まれた。
かと思えば、視界がいきなり真っ暗になる。
そして気づく、唇に触れる感触。
頭がくらくらするくらい熱をもったその行為に、上手く抵抗することが出来ない。
「だったら、なんで俺にしねーの?」
そう告げる和谷は、わたしの知らない男の人の顔をしていた。
わたしたちは幼なじみの腐れ縁だったはずなのに。
彼の言動に理解が追いつかない。
「いい加減気づけ、ばか!俺が今までどれだけ……!」
堰を切ったように、これまでずっとしまい込まれていた気持ちが言葉になって溢れ出る。
「俺だってずっと好きだったのに……お前は全っ然気づきもしないでほいほい他の男のとこ行くし……」
それでもわたしが幸せになれるならば、ただのいい友だちでいようと思っていた。
けれど、さすがにもう限界で、自分の気持ちにこれ以上嘘はつけないと。
「わ、や……」
「俺じゃ……だめなの、かよ……」
彼の震える言葉で、ようやく事の重大性に気がついた。
ここまで真剣にわたしのことを考えてくれていたのだ。
一気に体温が駆け上がり、頬は火が出るかと思うくらい熱を帯びているのがわかる。
昨日まではお互いにあんなに憎まれ口をたたいていたのに、友だちだったのに。好きだなんて言われたら、もうその関係には戻れない。
どうしたって意識してしまう。
でもそれを嬉しいと思う自分が確かに今ここにいる。
「ゆっくりでいいから……ちゃんと考えて欲しい。」
真摯な眼差しに射抜かれて、ますます鼓動が速くなる。
完全に思考回路はショートしてしまったらしい。
「あの、もっかい……して?」
「は?」
「だから……さっきの」
何を口走っているのか、もう自分では制御できない。
「……どうなっても、知らないからな!怒るなよ!」
念のためなのか保険の一言を置き、深呼吸をひとつしてから彼は唇を寄せた。
さっきよりも優しくて甘い。
いま、やっとわかったよ。
わたしの幸せは、ここにあったんだって。
どかどかと無遠慮に部屋に入り込んで、ワンルームの狭いリビングにどっかと座り込む。
家の主はといえば、またかと半ば諦めたような表情で、いつもと同じように、わたしの好きな銘柄の缶チューハイを差し出してくれた。
「また彼氏と別れたんだけどさー」
「今回は三ヶ月か……。まぁ、長続きした方じゃね?」
ぐさりと刺さるような言い方に、当の本人はわたしのことなんてそっちのけで碁盤にぱちぱち石を置いている。
こっちはこんなにも落ち込んでいるというのに、棋譜並べなんて随分いいご身分だと、深夜に押しかけている迷惑な自分のことは棚に上げて、わたしはぶすっとふくれっ面を作った。
「今度こそいけると思ったのにさぁ……」
相手は職場の合コンで知り合った人だった。
容姿もそれなりに整っていたし、人当たりもすごく良い人だった。
この人ならって思えたのに。
わたしの部屋に碁盤が置いてあるのを見て、それはそれは見た事のない表情で、ありとあらゆる言葉で馬鹿にしてきたのだ。
そこまで否定されては我慢もできず、横っ面を引っぱたいて、そのままの勢いで彼を追い出し、わたしも自宅を飛び出してきた。
そんな時の行く宛といえば、ここしかない。
「あいつの家だって、引くほどたくさん巨乳美少女フィギュア置いてあったのにさ……」
個人の趣味にとやかく言うやつは最低だ。
溢れ出るままにぶちぶちと文句をこぼしていると、不意にそれを遮るように首根っこを掴まれた。
かと思えば、視界がいきなり真っ暗になる。
そして気づく、唇に触れる感触。
頭がくらくらするくらい熱をもったその行為に、上手く抵抗することが出来ない。
「だったら、なんで俺にしねーの?」
そう告げる和谷は、わたしの知らない男の人の顔をしていた。
わたしたちは幼なじみの腐れ縁だったはずなのに。
彼の言動に理解が追いつかない。
「いい加減気づけ、ばか!俺が今までどれだけ……!」
堰を切ったように、これまでずっとしまい込まれていた気持ちが言葉になって溢れ出る。
「俺だってずっと好きだったのに……お前は全っ然気づきもしないでほいほい他の男のとこ行くし……」
それでもわたしが幸せになれるならば、ただのいい友だちでいようと思っていた。
けれど、さすがにもう限界で、自分の気持ちにこれ以上嘘はつけないと。
「わ、や……」
「俺じゃ……だめなの、かよ……」
彼の震える言葉で、ようやく事の重大性に気がついた。
ここまで真剣にわたしのことを考えてくれていたのだ。
一気に体温が駆け上がり、頬は火が出るかと思うくらい熱を帯びているのがわかる。
昨日まではお互いにあんなに憎まれ口をたたいていたのに、友だちだったのに。好きだなんて言われたら、もうその関係には戻れない。
どうしたって意識してしまう。
でもそれを嬉しいと思う自分が確かに今ここにいる。
「ゆっくりでいいから……ちゃんと考えて欲しい。」
真摯な眼差しに射抜かれて、ますます鼓動が速くなる。
完全に思考回路はショートしてしまったらしい。
「あの、もっかい……して?」
「は?」
「だから……さっきの」
何を口走っているのか、もう自分では制御できない。
「……どうなっても、知らないからな!怒るなよ!」
念のためなのか保険の一言を置き、深呼吸をひとつしてから彼は唇を寄せた。
さっきよりも優しくて甘い。
いま、やっとわかったよ。
わたしの幸せは、ここにあったんだって。