ヒカルの碁
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「お前さぁ、どんなの聴いてんの?」
陽も傾きかけた教室で日誌にペンを走らせていたら、唐突に和谷がそう聞いてきた。
そもそも貴方も日直なのだから一緒に日誌の感想欄のところ考えて欲しいのだけど。
聞いても眠かったとかよくわかんない、という感想しか無くて、結局私が1人で書いているというのに。
「・・・なんの話?」
「いやだからさぁ、この前駅で待ち合わせた時にお前イヤホンして何か聴いてたじゃん。」
あれは確か、再来週末の学祭で使う備品を買いに行ったときのことだった。うちのクラスは定番中の定番でお化け屋敷をやるのだけど、その看板に使うポスカが足りなくなりそうだということで、担当の私と普段準備に来られない代わりに買い出しくらい手伝えと半ば強制的に和谷が選ばれたのだった。
「・・・別に、なんでもいいじゃない。」
「気になる。」
こんなに頑固な人だとは思わなかった。
全然引いてくれる気配ないんだもの。
だから仕方なく、そう和谷がわがままを言うから仕方なく。
私は鞄から小さな巾着を取り出して、中に入れていたMDのディスクを彼に渡した。
「あの時聴いてたのはこれ」
「いやいやいや!これだけ渡されても!オレ今MD持ってないし!」
「なら貸すから。明日にでも返して。」
「明日は手合いだから来ねーよ」
「じゃぁ、明後日でいいから。」
「明後日も手合い。」
まったく、院生様というのは忙しいらしい。
そういえば、今日も1週間ぶりの登校だった気がする。
「そうじゃなくて。今、聴かせて。」
伸びてきた彼の手はイヤホンを攫っていき、左耳にピースを挿す。
それから、私の右耳にも。
「どの曲?」
勝手に電源を入れて、かちかちボタンを押して曲を回していく。
「・・・えっ、と・・・最後、の・・・」
決してイヤホンのコードは長くない。
強制的に顔が近くなってしまって、どこを見ていいかわからない。
心臓も、ばくばく音を立ててジャンプしているみたいにうるさい。
「お、これだな?」
そんな私のことはお構いなしに、なんでもない事のように彼は音楽に夢中。
いつもは両耳から聴こえてくる声が半分しかないのは違和感のはずなのに。
どうしてこんなにどきどきして、でも心地がいいんだろう。
「へぇ・・・うん、オレも好き。」
それは曲のことなのに。
真っ直ぐ私を見て好きだなんて言うから、変な勘違いをしてしまいそうになる。
違う、違うから。
好きは私に対してじゃない。
和谷にとって私なんてクラスメイトの1人にしかすぎないんだから。
「もっ、もういいでしょ?!日誌も終わったし、帰るから!」
乱暴に外したせいでぶつりと音が切れる。
ばたばたと慌ただしく荷物を片付けて、最後にディスクだけ取り出してもう一度彼に差し出した。
「きっ、聴きたいなら貸すから。」
それだけ言い残して足早に踵を返して教室を飛び出した。
どんどん顔が熱くなっていくのがわかる。
それだけはどうか気づかれていませんように。
陽も傾きかけた教室で日誌にペンを走らせていたら、唐突に和谷がそう聞いてきた。
そもそも貴方も日直なのだから一緒に日誌の感想欄のところ考えて欲しいのだけど。
聞いても眠かったとかよくわかんない、という感想しか無くて、結局私が1人で書いているというのに。
「・・・なんの話?」
「いやだからさぁ、この前駅で待ち合わせた時にお前イヤホンして何か聴いてたじゃん。」
あれは確か、再来週末の学祭で使う備品を買いに行ったときのことだった。うちのクラスは定番中の定番でお化け屋敷をやるのだけど、その看板に使うポスカが足りなくなりそうだということで、担当の私と普段準備に来られない代わりに買い出しくらい手伝えと半ば強制的に和谷が選ばれたのだった。
「・・・別に、なんでもいいじゃない。」
「気になる。」
こんなに頑固な人だとは思わなかった。
全然引いてくれる気配ないんだもの。
だから仕方なく、そう和谷がわがままを言うから仕方なく。
私は鞄から小さな巾着を取り出して、中に入れていたMDのディスクを彼に渡した。
「あの時聴いてたのはこれ」
「いやいやいや!これだけ渡されても!オレ今MD持ってないし!」
「なら貸すから。明日にでも返して。」
「明日は手合いだから来ねーよ」
「じゃぁ、明後日でいいから。」
「明後日も手合い。」
まったく、院生様というのは忙しいらしい。
そういえば、今日も1週間ぶりの登校だった気がする。
「そうじゃなくて。今、聴かせて。」
伸びてきた彼の手はイヤホンを攫っていき、左耳にピースを挿す。
それから、私の右耳にも。
「どの曲?」
勝手に電源を入れて、かちかちボタンを押して曲を回していく。
「・・・えっ、と・・・最後、の・・・」
決してイヤホンのコードは長くない。
強制的に顔が近くなってしまって、どこを見ていいかわからない。
心臓も、ばくばく音を立ててジャンプしているみたいにうるさい。
「お、これだな?」
そんな私のことはお構いなしに、なんでもない事のように彼は音楽に夢中。
いつもは両耳から聴こえてくる声が半分しかないのは違和感のはずなのに。
どうしてこんなにどきどきして、でも心地がいいんだろう。
「へぇ・・・うん、オレも好き。」
それは曲のことなのに。
真っ直ぐ私を見て好きだなんて言うから、変な勘違いをしてしまいそうになる。
違う、違うから。
好きは私に対してじゃない。
和谷にとって私なんてクラスメイトの1人にしかすぎないんだから。
「もっ、もういいでしょ?!日誌も終わったし、帰るから!」
乱暴に外したせいでぶつりと音が切れる。
ばたばたと慌ただしく荷物を片付けて、最後にディスクだけ取り出してもう一度彼に差し出した。
「きっ、聴きたいなら貸すから。」
それだけ言い残して足早に踵を返して教室を飛び出した。
どんどん顔が熱くなっていくのがわかる。
それだけはどうか気づかれていませんように。