ヒカルの碁
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『ん?どーした?』
優しい声が耳朶を擽って、小さく安堵の息をつく。
別にこれといって理由があったわけではないけれど、何だか急に気持ちが落ち着かなくなって、時間も考えずに通話ボタンを押してしまった。
それなのに彼は咎めることすらせずに、わたしのなんの生産性もない話につきあってくれている。
「いま……なに、してた?」
『ちょっとコンビニ行こうとしてる。』
「こんな時間に?」
『さっきまで碁の勉強してたからさ。』
「そっか、お疲れさま。」
プロになってからも、いやプロになってからの方が今まで以上にそのワードが出てくることが増えた。
碁の勉強してた、とか。
師匠と打ってた、とか。
努力をあまり他人に見せたがらない彼だから、笑ってさらりと流すけれど。
本当は言葉以上だということをわたしは知っている。
だからこそ、負担になるようなことはしたくなかったのに。
『お前、なんか今日元気ねーな。』
「え?そんなこと……ないよ?」
『ばーか、オレに嘘ついたってムダだっつーの。』
きっと目の前にいたら、デコピンされてた。
そんな口調。
もう、どうしてそんなお見通しなの?
『とりあえず、玄関のドア開けてみろよ。』
「は?何言って……」
「いーから。ほれ。」
意味がわからないと頭に疑問符を沢山並べながら、言われるがままにドアノブを捻る。
……すると、そこには。
「よっ!」
満面の笑みを向けてくる義高が、そこにいた。
「な、なんで……?だって、さっきコンビニにって……」
彼とわたしの家はそう近いわけではない。
少なくとも2つは電車を乗り継いで来なければたどり着けない距離だ。
しかも、こんな時間にわざわざ。
「全部ウソだよ。お前に会いに来たんだよ。」
彼が玄関に入ってきて、ぱたんとドアが閉まる。
それと同時に、現状把握が出来ずに呆然と立ち尽くすわたしは、いつの間にか義高の腕の中にすっぽり収められてしまった。
「……ばか……。」
無意識に零れた涙は、彼のシャツの胸元に吸い込まれてぼんやり染みを作る。
数ヶ月ぶりのぬくもりが嬉しくて、堪えていたものが一気に決壊して溢れた。
子どもみたいにわんわん声を上げて泣きじゃくるわたしを、ただ黙って彼は抱きしめてくれていた。
* * *
「……明日、目腫れそうだな。」
「うー……こまる……。」
ようやく落ち着きを取り戻して、わたしの狭いシングルベッドに二人で並ぶ。
彼が用意してくれた冷たいタオルが気持ちいい。
とはいえ、彼氏の前であんな醜態を晒した挙句、激しく不細工な顔をしているなんて最悪だ。
今更意味はないとわかっていても、隠さずにはいられない。
頭まで布団を被って、見られないように隠れる。
そんなわたしを見て、義高はふっと小さく笑みをこぼしてから、布団の上からぎゅっと抱きしめてくれた。
優しい声が耳朶を擽って、小さく安堵の息をつく。
別にこれといって理由があったわけではないけれど、何だか急に気持ちが落ち着かなくなって、時間も考えずに通話ボタンを押してしまった。
それなのに彼は咎めることすらせずに、わたしのなんの生産性もない話につきあってくれている。
「いま……なに、してた?」
『ちょっとコンビニ行こうとしてる。』
「こんな時間に?」
『さっきまで碁の勉強してたからさ。』
「そっか、お疲れさま。」
プロになってからも、いやプロになってからの方が今まで以上にそのワードが出てくることが増えた。
碁の勉強してた、とか。
師匠と打ってた、とか。
努力をあまり他人に見せたがらない彼だから、笑ってさらりと流すけれど。
本当は言葉以上だということをわたしは知っている。
だからこそ、負担になるようなことはしたくなかったのに。
『お前、なんか今日元気ねーな。』
「え?そんなこと……ないよ?」
『ばーか、オレに嘘ついたってムダだっつーの。』
きっと目の前にいたら、デコピンされてた。
そんな口調。
もう、どうしてそんなお見通しなの?
『とりあえず、玄関のドア開けてみろよ。』
「は?何言って……」
「いーから。ほれ。」
意味がわからないと頭に疑問符を沢山並べながら、言われるがままにドアノブを捻る。
……すると、そこには。
「よっ!」
満面の笑みを向けてくる義高が、そこにいた。
「な、なんで……?だって、さっきコンビニにって……」
彼とわたしの家はそう近いわけではない。
少なくとも2つは電車を乗り継いで来なければたどり着けない距離だ。
しかも、こんな時間にわざわざ。
「全部ウソだよ。お前に会いに来たんだよ。」
彼が玄関に入ってきて、ぱたんとドアが閉まる。
それと同時に、現状把握が出来ずに呆然と立ち尽くすわたしは、いつの間にか義高の腕の中にすっぽり収められてしまった。
「……ばか……。」
無意識に零れた涙は、彼のシャツの胸元に吸い込まれてぼんやり染みを作る。
数ヶ月ぶりのぬくもりが嬉しくて、堪えていたものが一気に決壊して溢れた。
子どもみたいにわんわん声を上げて泣きじゃくるわたしを、ただ黙って彼は抱きしめてくれていた。
* * *
「……明日、目腫れそうだな。」
「うー……こまる……。」
ようやく落ち着きを取り戻して、わたしの狭いシングルベッドに二人で並ぶ。
彼が用意してくれた冷たいタオルが気持ちいい。
とはいえ、彼氏の前であんな醜態を晒した挙句、激しく不細工な顔をしているなんて最悪だ。
今更意味はないとわかっていても、隠さずにはいられない。
頭まで布団を被って、見られないように隠れる。
そんなわたしを見て、義高はふっと小さく笑みをこぼしてから、布団の上からぎゅっと抱きしめてくれた。