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原神

また、行ってしまった。
どこまで行けば、その背に届くのだろう。
どれだけ強くなれば、その手を取れるのだろう。

「……空……」

窓の向こうに広がる星空を眺めて、大きなため息がこぼれる。
身体のあちこちに巻かれた包帯がその怪我の大きさを物語っていた。
絶対安静、と困った表情をした七七に言われてしまったので、しばらく療養を余儀なくされている。
本当なら今すぐにでもここを飛び出して、兄を追いかけたいのに。
動かない身体がもどかしい。
弱い自分が憎らしい。
ぐっと奥歯を噛み締めた、その時。

「泣きたい時は泣いていいんだよ」

いつの間に部屋に入って来たのか、開いたドアに背を預けたタルタリヤが苦笑する。

「すごい傷だね」
「……これくらい、どうってこと」
「どうってこと、あるよね」

有無を言わせない笑顔に、思わず黙る。
確かに、ほんの少しでも動かせば激痛が走るけれど。
そんなことで弱音を吐いている場合ではない。

「痛いなら痛いって、言えばいいんだ」

無理して強がることはないよ。
そう言って彼は優しく頭を撫でてくれた。
思い出の中の兄と重なって、無意識のうちに涙が溢れて頬を伝う。

「……っ……ぅ……」

一度流れてしまえば、そう簡単には止められない。
肩を震わせて、声を押し殺して、嗚咽を漏らす。
すると今度は少し強めに、タルタリヤは肩を抱き寄せて包み込んでくれた。

「よく頑張ったね」
「……また……追いつけ……なかっ……た……」
「うん」
「……わたし……弱い……から……」
「怪我が治ったらオレが相手になってあげる」

だから今はゆっくりおやすみ。
彼の優しい声が耳朶を掠めた。
ざわざわと荒れていた心が、だんだんとゆるやかになっていくのがわかる。

「……ありがとう……」

まだもうしばらく涙は流れてしまいそうだけれど。
あと少しだけ、そばにいて。
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