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X'mas2020

ぱちん、ぱちん。
わたしたちの間に響くのは、鈴の音でもなく、グラスを交わした音でもなく。

「……ねぇ、和谷。」
「ん~?」

いつもと何も変わらない。
碁盤に石を置いていく、音、

「今日はクリスマスですねー」
「そうだなー」
「なんでわたしたち、碁打ってるんですかねー」
「お前がそれでいいっつったんだろ」

そう、でした。
世のカップルみたいに手を繋いでイルミネーションを眺めるのも悪くはないけれど。
寒い中外を歩くのは嫌だし。
おしゃれなレストランで畏まった料理を食べるのも、なんだかわたしたちらしくないと思って。

「せめてチキンくらい買って来ればよかったかな」
「それならもうすぐ来るから心配ないぜ」

後でデリバリー頼んでおいた、なんていつの間に。
悪戯っぽく笑うところを見ると、きっと。

「その前に……渡しとくものあったわ」

がさがさと鞄の中から取り出して、わたしの目の前に差し出されたそれは。
きちんとラッピングされた小さな箱。
これくらいは必要だろ?と照れくさそうに笑う彼。」

「メリークリスマス」

なにカッコつけたことしてるの、和谷のくせに。
なんてつい悪態めいたことを言ってしまったけれど。
幸せで緩んだ顔じゃ、説得力の欠片もないね。


Marry Christmas!

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