蝶ノ光
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その日、部活終了後に仁王とテニススクールへ行った。
昨日手塚と会って仲直りしたことを伝えたく、私が呼び出したのである。
飲み物を片手に仁王とカフェテリアへ向かい、席に着く。
「今日は練習前に話があるって言っとったが、どうしたんじゃ?」
「あのね、昨日手塚くんと会ったの」
単刀直入に用件を伝えると、ピクリと仁王の片眉が上がった。だが口を挟む気配がないので、話を続ける。
「それで青学の現状を聞いたのだけど……」
大会参加者――青学のレギュラー陣は、私を探していること。
本当に私が部室を荒らしたり、盗みをしたりしたのか疑問に思う部員が増えていること。
私の噂を聞いて、試合をしたいと思う部員が増えていること。
話終えると、仁王は一息ついてから口を開いた。
「お前さんへの誤解が解けそうなのは喜ばしいんじゃが……いつの間に、手塚にテニススクールの場所教えとったのか?」
「ううん、私は教えてないの。だから貞治かリョーマに聞いたのかと思ったのだけど、どうも違うみたい」
「ほーう?」
私が今のテニススクールに通っているのを知っている人は、限られていくるはず。
しかし立海テニス部の部員らが教えるとも思えないので、手塚に伝えた人物に心当たりがなかった。手がかりがないので仕方がない。
「手塚くんが青学のみんなに言いふらすことは、ないと思うけど……千夏や不二くんたちと、ばったり遭遇しないように気を付けないと。もし良ければ、また試合するときペア組んでもらえないかしら?」
まだ彼女らと向き合う決心は、ついていなかった。それに仁王が側にいてくれたら、もし青学部員と出会っても心強い。
「ん、もちろん構わんよ。ところで時雨は大会本選で誰と組むか、もう考えていたりするのか?」
誰とペアを組むかは、大会で優勝を目指すにあたって重要な要素だ。いくら個人の能力が高くても、相方との相性が悪ければ、試合に勝つのは難しいだろう。
本選でペアを組んでみたい人。
蓮二、貞治、蔵兄、そして仁王くん――。
ペアを組んで、安心して背中を預けられる人を思い浮かべる。
だが他校の試合したことがない選手と組み、試してみたいという気持ちもある。それに私が組みたいと思っていても、相手がどう考えているか。
まだ予選期間だし、周りの様子を見てからでも決めたい。
「考えてはいるけど、まだ決まってないわ。仁王くんは?」
「そうじゃのう、俺は――……いや、もう少ししたら誘ってみるぜよ」
「? もう決まっているの?」
「決まってないが、組みたい人は決まってるナリ」
「そう、なんだ」
柳生だろうか。
普段の練習で、彼らのコンビネーションの良さを見ているだけに、納得するものがある。その場合、仁王と組めないのは残念だが。
「さて、そろそろ練習しよっか」
「……そうじゃのう」
気持ちを切り替えて練習を誘う。
仁王はもの言いたげな顔をしていたが、同意したので突っ込むことはできなかった。
*
練習後、日が落ちたということで、仁王に家の近くまで送ってもらえることに。
二人で桜の並木道を歩く。神奈川に引っ越してきた頃は、蕾がふくらんでいたが満開の時期が過ぎ、今は青葉のみとなった。
桜が満開の頃は、まだマネージャーではなかったので、こうして仁王と並んで帰ることが少なかったを残念に思う。
来年は高校生だし、一緒にじっくり見られる機会があるとも限らない。まだ少し未来のことだが、胸が締め付けられた。
「時雨」
「へっ!?」
急に名前を呼ばれ、肩が跳ねる。
席替え以降、苗字から名前で呼ばれるようになったが、馴れる日は来るのだろうか。テニスの話をしている時は平気だったが、別の話をしている時は、まだまだ難しい。
仁王が足を止めたので、私もそれに倣った。
「お前さん、驚きすぎじゃ」
「少し考え事してたから、名前を呼ばれてビックリしたの……!」
「考え事?」
小首を傾げる姿が可愛い。
「来年は満開の時期に、仁王くんとゆっくり見られるかなって」
すると彼は目を大きく見開いた後、目尻を下げた。そして頭を撫でられる。
「時雨が望むなら、一緒に見られるだろうよ」
「!」
私の頬は、林檎のように真っ赤だろう。
仁王のニカッと笑った姿が眩しかったのだ。
「……な、なにか言いたいことがあったんじゃないの?」
誤魔化すように、本来の話題に戻す。
私が歩きだすと、声をあげて笑いながら仁王も歩きだした。
「そうじゃな。ゴールデンウィークの予定は決まってるか?」
「まだ決まってないわ」
「そうか。それなら日曜日遊びに行かないか?」
どこかホッとしたように言う仁王。
日曜日は部活はオフだし、今のところ予定も入っていない。
「もちろん良いわよ。どこへ行くの?」
「それは秘密じゃ。楽しみにしてんしゃい。それじゃ、また明日」
「ふふ、分かったわ。送ってくれて、ありがとう」
家の近くまで着いたので、手を振って仁王と別れる。
彼がどこかへ連れていってくれるとは珍しい。
というより、一緒に遊ぶのは初めてだ。いつも共にテニスをしており、隣にいるのが当たり前になってきているからか、初めてである感覚はないが。
どこへ行くか予想できない分、期待が膨らむ。
私は軽い足取りで、家の中に入った。
昨日手塚と会って仲直りしたことを伝えたく、私が呼び出したのである。
飲み物を片手に仁王とカフェテリアへ向かい、席に着く。
「今日は練習前に話があるって言っとったが、どうしたんじゃ?」
「あのね、昨日手塚くんと会ったの」
単刀直入に用件を伝えると、ピクリと仁王の片眉が上がった。だが口を挟む気配がないので、話を続ける。
「それで青学の現状を聞いたのだけど……」
大会参加者――青学のレギュラー陣は、私を探していること。
本当に私が部室を荒らしたり、盗みをしたりしたのか疑問に思う部員が増えていること。
私の噂を聞いて、試合をしたいと思う部員が増えていること。
話終えると、仁王は一息ついてから口を開いた。
「お前さんへの誤解が解けそうなのは喜ばしいんじゃが……いつの間に、手塚にテニススクールの場所教えとったのか?」
「ううん、私は教えてないの。だから貞治かリョーマに聞いたのかと思ったのだけど、どうも違うみたい」
「ほーう?」
私が今のテニススクールに通っているのを知っている人は、限られていくるはず。
しかし立海テニス部の部員らが教えるとも思えないので、手塚に伝えた人物に心当たりがなかった。手がかりがないので仕方がない。
「手塚くんが青学のみんなに言いふらすことは、ないと思うけど……千夏や不二くんたちと、ばったり遭遇しないように気を付けないと。もし良ければ、また試合するときペア組んでもらえないかしら?」
まだ彼女らと向き合う決心は、ついていなかった。それに仁王が側にいてくれたら、もし青学部員と出会っても心強い。
「ん、もちろん構わんよ。ところで時雨は大会本選で誰と組むか、もう考えていたりするのか?」
誰とペアを組むかは、大会で優勝を目指すにあたって重要な要素だ。いくら個人の能力が高くても、相方との相性が悪ければ、試合に勝つのは難しいだろう。
本選でペアを組んでみたい人。
蓮二、貞治、蔵兄、そして仁王くん――。
ペアを組んで、安心して背中を預けられる人を思い浮かべる。
だが他校の試合したことがない選手と組み、試してみたいという気持ちもある。それに私が組みたいと思っていても、相手がどう考えているか。
まだ予選期間だし、周りの様子を見てからでも決めたい。
「考えてはいるけど、まだ決まってないわ。仁王くんは?」
「そうじゃのう、俺は――……いや、もう少ししたら誘ってみるぜよ」
「? もう決まっているの?」
「決まってないが、組みたい人は決まってるナリ」
「そう、なんだ」
柳生だろうか。
普段の練習で、彼らのコンビネーションの良さを見ているだけに、納得するものがある。その場合、仁王と組めないのは残念だが。
「さて、そろそろ練習しよっか」
「……そうじゃのう」
気持ちを切り替えて練習を誘う。
仁王はもの言いたげな顔をしていたが、同意したので突っ込むことはできなかった。
*
練習後、日が落ちたということで、仁王に家の近くまで送ってもらえることに。
二人で桜の並木道を歩く。神奈川に引っ越してきた頃は、蕾がふくらんでいたが満開の時期が過ぎ、今は青葉のみとなった。
桜が満開の頃は、まだマネージャーではなかったので、こうして仁王と並んで帰ることが少なかったを残念に思う。
来年は高校生だし、一緒にじっくり見られる機会があるとも限らない。まだ少し未来のことだが、胸が締め付けられた。
「時雨」
「へっ!?」
急に名前を呼ばれ、肩が跳ねる。
席替え以降、苗字から名前で呼ばれるようになったが、馴れる日は来るのだろうか。テニスの話をしている時は平気だったが、別の話をしている時は、まだまだ難しい。
仁王が足を止めたので、私もそれに倣った。
「お前さん、驚きすぎじゃ」
「少し考え事してたから、名前を呼ばれてビックリしたの……!」
「考え事?」
小首を傾げる姿が可愛い。
「来年は満開の時期に、仁王くんとゆっくり見られるかなって」
すると彼は目を大きく見開いた後、目尻を下げた。そして頭を撫でられる。
「時雨が望むなら、一緒に見られるだろうよ」
「!」
私の頬は、林檎のように真っ赤だろう。
仁王のニカッと笑った姿が眩しかったのだ。
「……な、なにか言いたいことがあったんじゃないの?」
誤魔化すように、本来の話題に戻す。
私が歩きだすと、声をあげて笑いながら仁王も歩きだした。
「そうじゃな。ゴールデンウィークの予定は決まってるか?」
「まだ決まってないわ」
「そうか。それなら日曜日遊びに行かないか?」
どこかホッとしたように言う仁王。
日曜日は部活はオフだし、今のところ予定も入っていない。
「もちろん良いわよ。どこへ行くの?」
「それは秘密じゃ。楽しみにしてんしゃい。それじゃ、また明日」
「ふふ、分かったわ。送ってくれて、ありがとう」
家の近くまで着いたので、手を振って仁王と別れる。
彼がどこかへ連れていってくれるとは珍しい。
というより、一緒に遊ぶのは初めてだ。いつも共にテニスをしており、隣にいるのが当たり前になってきているからか、初めてである感覚はないが。
どこへ行くか予想できない分、期待が膨らむ。
私は軽い足取りで、家の中に入った。