お風呂に入ってから、自室のベットで横になる。
　パンダの抱き枕に顔をうずめて、帰り道の出来事を噛み締めた。

「ゴールデンウィーク、どこへ行くのかしら？」

　仁王に誘ってもらえたのが嬉しく、胸の高鳴りが収まらない。行き先は教えてもらえなかったが、彼と一緒ならどこへ行っても楽しいだろう。
　引っ越してからまだ一ヶ月ということもあり、そこまで私は神奈川の遊びスポットには詳しくない。恐らくエスコートをしてもらえるだろうが、任せきりなのは気が引けるし、調べてみよう。
　仰向けになり、パンダの抱き枕をお腹の上に乗せる。
　サイドテーブルに置いていた携帯を手に取り、検索画面に『神奈川　遊び場』と入力してから虫眼鏡のマークを押した。検索結果にショッピングモール、水族館、海など遊びスポットが表示される。
　早速、おすすめスポット特集のページをクリックしようとした瞬間、携帯が鳴った。突然の通知音に、ビクッと肩が跳ねる。
　どうやらトークアプリのメッセージが来たらしい。
　画面上部に通知が表示された。メッセージの差出人は、白石蔵ノ介。
　検索結果画面を一旦閉じて、トークアプリを立ち上げる。
　メッセージには、

『GW中は跡部くんが手配してくれた、東京のホテルに泊まることになったで。
時雨の都合が良ければ、またダブルスペア組んでもらえないやろか？』

　と書かれていた。
　四天宝寺中をはじめとした遠方からの大会参加者は、ゴールデンウィーク中は東京にいるとのこと。
　ちなみに明日、ゴールデンウィーク中は初日の午前と最終日の午後以外は、試合の日時に制限がないと主催者から連絡があるらしい。
　普段は、バッジをかけた試合は決まった曜日、時間しかできないので、遠方の参加者とテニスする機会が限られてしまう。東京に来てくれるならば、気兼ねなく練習や試合に誘えるし、色んなプレイヤーのデータを集めるチャンスだ。

『私もGW中に蔵兄とテニスできたら嬉しいな。
月曜か火曜はどうかしら？』

　せっかく蔵兄が来るなら、一日テニスがしたい。
　ゴールデンウィーク初日と最終日は、移動時間で半日過ぎてしまうことを予想して、それ以外の空いている日を誘ってみる。
　すぐに返信が来て、火曜日――ゴールデンウィーク最終日前日――にテニスをする約束をした。待ち合わせ場所は、蔵ノ介が吹雪に挨拶したいようなので私の家だ。

「蔵兄を案内するためにも、調べておかないと！」

　私はトークアプリを閉じて、胸を弾ませながら、おすすめスポット特集に目を通すのだった。