物書きリハビリ中

12/13

2021/12/13 13:10
ロビン
「なにかあったのかしら」
「え」

今まさに頭の中にいた相手の肉声が聞こえて思考の沼から抜け出す。

「ロビン」
「さっきからずっと浮かない顔をしているわね」
「…」
「話してくれない?」
「…うまく話せる自信がないんだけど」
「それでもいいわ」

無意識に深呼吸した。
もやもやと頭の中に漂う違和感がうまく当てはまる言葉を探す。

「…さっきの戦闘中に、ロビンがしらほしちゃんを”かよわい女の子”って言ったじゃない」
「ええ、言ったわ」

ロビンの表情が”あらヤキモチ?”とでもいいたげに変わるのを見つつ、まあそう思われてもいいんだけど、今のこのモヤモヤはそんな簡単な言葉で表せるものではないからこんなに頭を抱えているのに。

「それってつまり、ロビンは”かよわくない側”として発言してることになるよね」
「そうね」
「もちろんロビンは強いし、私もいっつも守られてて感謝してるんだけど」

嫌な気分にさせまいとするあまり、大きく迂回しそうになる話の道筋を一瞬見失いかけて、違う違う本題はそれじゃない、と頭の中で道案内する。

「…なんていうか」

この言葉は重すぎるだろうか。でも他に近い言葉が見つからない。

「不公平だな、って思って」
「…不公平?」

一度強い言葉を使ってしまったらもう後には引けない。
堰を切ったように言葉が溢れてくる。

「しらほしちゃんは、周りに戦ってくれる人がたくさんいて、だからかよわいままでいられた。もちろんそれ以外の大変なことたくさんあったって知ったし、すごい子だと思うし私には真似できないって思うけど、戦う力についてだけ切り取ると環境に恵まれてるなぁって。ロビンはもちろん強いけど、それは強くならなきゃ生きていけない環境だったからそうなっただけで、もとはかよわい女の子だったはずでしょ?もちろん私は今のロビンが好きだし、たぶんロビンはこんなこと気にしてもいないと思うんだけど、それでも、…かよわかった昔のロビンが強くなるのはすごく大変でつらかったはずなのに。その時の大変さを、ちゃんと誰かが助けてあげられたらよかったのにって」

ああ、もう。ロビンと話す時はちゃんと整理して話したいのに。
うまくまとめられないまま想いが口からこぼれ落ちてしまう。

一度深呼吸した。
急に、ものすごく失礼なことを言ってしまったかも、と不安になる。
本人が誇りにしている強さを憐れまれたと思ってしまわないだろうか。



「ありがとう」

急にロビンに抱きしめられて硬直する。
そういえばロビンがどんな顔をしているのか見る余裕もなかった。

「あなたが助けてくれたわ」
「…え?」

目を上げる。

「いま、あなたが助けてくれた」

どういう理屈でそうなるのか、聡明なロビンの頭の中はわからないけれど。
見たことのないほど柔らかなほほえみを前にしたら、そんなことはどうでもいいかと思えた。

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