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物書きリハビリ中

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2021/11/09 16:30
ゾロ
「心頭滅却すれば寒さぐれェ」
「わかったけど私まだ煩悩まみれだから私のために火起こすの手伝って」

ガタガタと震えながら強がる剣士にため息をつく。
ここはとある冬島の森の中。
分刻みで快晴と猛吹雪を繰り返す気候のせいで視界が最悪で、仲間はバラバラにはぐれてしまった。

船番をしていた(というか昼寝していたせいで置いていかれていた)ゾロを道中で発見した時は、あまりの軽装にこっちが寒くなったくらいだ。
本人曰く”起きたらいい天気だったから散歩に出た”とのこと。
つまり普段通りの服装で猛吹雪の中を歩いていたわけだ。
山小屋を見つけなかったら今頃二人ともどうなっていたかわからない。

「これでよし」
「器用だな」
「でしょ」

火をつけて部屋を家探しすると、毛布が一枚だけあるのを見つけた。


「これ羽織りなよ」
「お前が使え」
「はあ…」

どこまで意地っ張りなんだろう。
ふといいこと…いや、悪いことを思いつく。

「ゾロそこに座って」
「あ?」

素直に腰を下ろしたゾロの足の間に座り込んだ。
思いのほか密着度が高い姿勢に、体の芯の温度が上がる。

「なっお前、」
「一人じゃ寒いもん」

ゾロの上から毛布をかけて暖炉の火に当たる。
あれだけ強がってたはずのゾロの体は冷え切っていて、何をそんなに意地になっていたのかと首を傾げた。

「…お前な」
「なに」
「気軽にこういうことすんじゃねェ」
「うん?」
「食ってくれって言ってるようなもんだろうが」
「あぁ、」

ぎゅ、と分厚い胸板に背中を押し付けた。
硬直するゾロに苦笑する。

「ゾロにしかしない」
「…は?」

体を離して振り返り、狼狽するゾロに少し笑った。
その目に映り込む暖炉の光に意識がとろける。

「最初に言ったでしょ、煩悩まみれだからって」

硬い太ももに手を置いてゆっくり目を瞑った。

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