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物書きリハビリ中

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2021/11/04 00:00
ロー
「それ一般的には聞かないと思うけど」
「おれは一般的な人間じゃねェ」
「そっか」

洗濯物を干し終わったのか隣に座ってきたニナが、愉快そうな顔でおれを見る。

「残念だけど恋人は一人も。デートする相手はいたけど、いわゆる男友達って扱いなのよね、向こうでは」
「そうか」
「ローは?結婚しようと思ったけど〜とか言ってなかった?」
「言ったか?」
「聞いたと思う」
「…」
「話したくないならいいけど」

いまの倍忙しく5倍ストレスのかかる職場だった。
その生活を支える女がいた。
そいつと一緒になってもいいと思った。それだけだ。

「消極的生存戦略だ」
「ふーん」

ニナが飲んだマグカップの中身は、つい最近急に飲むようになったハーブティーというものらしい。

「積極性の差はあっても、結局のところ結婚って生存戦略だよねぇ」
「そうか?」
「みんな何かしら、生き抜くための手段として結婚してると思うよ。経済的に安定するため、生活の質を上げるため、リスクヘッジのためとか、あと精神安定のためとか」

こいつといると全部手に入るな、とふと思った。

「あ、ひとつ忘れてた」

ニナがひらりと一枚の紙を差し出す。
渡されたそれは仕事でよく見る画像だった。おれが使う時は心臓の動きや弁の異常を測るものだがこれは違う。

これは、

「こういうのもあるよね、結婚って」



命のはじまり。

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