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物書きリハビリ中

10/5

2023/10/05 09:45
ゾロウソップ
届かないや、私。

最初に思ったのはそれだった。




膝を抱えて座り込む私の脳裏に、何度だって浮かぶ光景。
あんまり印象的すぎて、その時の会話の内容を忘れるくらい。
ルフィがサンジの戦力について何か言って、それにゾロが張り合って、ナミが宥めながらゾロの頭をポンポン撫でた。

普段ならナミは会話するだけで、触れたりはしない。少なくとも今まで見たことはなかった。
今回に限ってそうしたのは、たぶん何かを察知したから。
ゾロの内側の、…ネガティブな何かを。

私はそれに気づきもしなかった。
いつも通りのゾロとして、頼りになるつもりで見ていた。

不思議と悔しさや嫉妬は微塵も感じなかった。
ただ勝手な自分に反吐が出そうなだけで。


なにが、好きよ。

一方的な理想像を押し付けていただけで、ゾロの内側は何にも見えていなかった自分が心底嫌になる。

こんな私、恋をしている資格なんてないな。


かろうじて涙を抑えて天井を見る。

これから先、私が足を引っ張れば、誰かが傷ついたり最悪命を落としたりする局面に入るんだ。
こんなに浮き足立ってちゃいけない。
この気持ちには蓋をして、ちゃんと、目の前の戦いに集中しなくちゃ。

ふう、と大きくため息をついた。

「どうしたー?辛気臭ェなぁ」
「ウソップ」

「なんか、自分の甘さが嫌になって」
「甘さ?」
「四皇と戦うんだから、もっと気合い入れて行かなきゃなぁって」
「んまぁそりゃその通りだけどよー」

ウソップが隣にドサッと腰を下ろした。

「まだ上陸もしてねぇのに、今からそんなんじゃ息切れしちまうぞ?」

…ほんとに。
この船の人達はいちいち素敵なんだから。

「…ならウソップ、お願いがある」
「なんだよ」
「頭ポンポンして」
「は!?」
「そしたらリラックスできる気がする」

しばらく一人で百面相していたウソップが、腹を括ったようにこっちに向き直った。

「他のやつに言わねェって約束できるか」
「え、あえて言いふらしたりはしないけど、なんで」
「いろいろあんだよ!いいな!」
「…うん」

ポン、と頭に手が置かれて何度か跳ねる。
優しすぎない力加減が逆に心に刺さった。

「お前はちゃんと頑張ってんぞ」
「ーっ、」

もう、なんでこんな。

「おい、なに泣いてんだよ!」
「う、嬉しくて泣いてる、ってことにしといて」
「…まったく、思い詰めすぎだぞーお前の悪い癖だ」
「…うん」

あぁ、これは効くなぁ。
ウソップ、いいやつ。

「…ありがと」
「おう」

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