Blue Moon
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あの日、季節は冬島の夏だった。
小高い丘を登っていく。
あと3ヶ月もすればこの丘も冷たい氷と雪に閉ざされるそうだ。
探していた家はすぐに見つかった。
というより、家の体裁を保っている建物がそれしかなかったと言った方が正しい。
いずれにせよ思ったより簡単に見つけたその建物の扉をノックする。
返答はないが扉を開けた。
慣れ親しんだ匂いが鼻を衝く。
昼間だと言うのに薄暗い室内に目を凝らした。
診療台、机、薬品棚、器具台。
ービンゴだ。
「あんた、こんなところに何の用だ」
不意に暗がりから発された言葉に一瞬硬直する。
声が発された辺りに目を凝らすと、壁に寄せてある診察台の上に小柄な人影があった。
あの声。子供か。
「…ここで医者をやってるという男に用があって来た」
「へェ…残念だけどそいつは先週死んだ」
目が暗さに慣れてきて、子供の輪郭をとらえた。
診察台の上に胡坐をかき、膝の上に肘をついてこっちを見ている。
「…そうか」
「目的の奴がいないんだろ、出てってくれや」
子供が胡坐を解いて床に降り立った。
反射的に腕をつかむ。
「待て」
「なんだよ」
「診療記録はないか」
子供が遠くを見るような目でおれを視界に入れる。
「あるとしたらそこの机の引き出しだ。勝手に漁れ」
手を振りほどいて扉の奥に消えた子供の姿を視界の端に入れつつ、机の中を探すとそれと思われる冊子を見つけた。
遠慮なく持ち帰ろうとした瞬間、何かの音を聞いた。
奥の扉を開ける。
「―ッ、おい!!」
子供が嘔吐して倒れていた。
抱き起こすと、さっきの暗がりではわからなかったが顔色が蒼白だった。
腹部に手を当てて丸まっている。頻呼吸。発熱。
「…触るな」
「おれは医者だ」
「…わかってる。あんた、トラファルガー・ローだろ」
全身状態の割にしっかりした口調が続く。
「そしておれは虫垂炎から腹膜炎を起こしてる。ほっときゃ死ぬ」
「…お前…」
「あんたにこれ頼むの、変な話だろうけどさ」
子供が眉をしかめながらおれを見た。
「ほっといてくんねェかな」
ブチっ、と何かが切れる音がした。
小高い丘を登っていく。
あと3ヶ月もすればこの丘も冷たい氷と雪に閉ざされるそうだ。
探していた家はすぐに見つかった。
というより、家の体裁を保っている建物がそれしかなかったと言った方が正しい。
いずれにせよ思ったより簡単に見つけたその建物の扉をノックする。
返答はないが扉を開けた。
慣れ親しんだ匂いが鼻を衝く。
昼間だと言うのに薄暗い室内に目を凝らした。
診療台、机、薬品棚、器具台。
ービンゴだ。
「あんた、こんなところに何の用だ」
不意に暗がりから発された言葉に一瞬硬直する。
声が発された辺りに目を凝らすと、壁に寄せてある診察台の上に小柄な人影があった。
あの声。子供か。
「…ここで医者をやってるという男に用があって来た」
「へェ…残念だけどそいつは先週死んだ」
目が暗さに慣れてきて、子供の輪郭をとらえた。
診察台の上に胡坐をかき、膝の上に肘をついてこっちを見ている。
「…そうか」
「目的の奴がいないんだろ、出てってくれや」
子供が胡坐を解いて床に降り立った。
反射的に腕をつかむ。
「待て」
「なんだよ」
「診療記録はないか」
子供が遠くを見るような目でおれを視界に入れる。
「あるとしたらそこの机の引き出しだ。勝手に漁れ」
手を振りほどいて扉の奥に消えた子供の姿を視界の端に入れつつ、机の中を探すとそれと思われる冊子を見つけた。
遠慮なく持ち帰ろうとした瞬間、何かの音を聞いた。
奥の扉を開ける。
「―ッ、おい!!」
子供が嘔吐して倒れていた。
抱き起こすと、さっきの暗がりではわからなかったが顔色が蒼白だった。
腹部に手を当てて丸まっている。頻呼吸。発熱。
「…触るな」
「おれは医者だ」
「…わかってる。あんた、トラファルガー・ローだろ」
全身状態の割にしっかりした口調が続く。
「そしておれは虫垂炎から腹膜炎を起こしてる。ほっときゃ死ぬ」
「…お前…」
「あんたにこれ頼むの、変な話だろうけどさ」
子供が眉をしかめながらおれを見た。
「ほっといてくんねェかな」
ブチっ、と何かが切れる音がした。
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