引越し、5月
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「…お前さ、新しい部屋に男上げんじゃねぇぞ」
何を見ているのか、前に目を向けたままのエースが言う。
エースの引っ越し当日の朝のことだった。
「俺の内定先、6月に配属決まるみてェなんだよ」
「…」
「ニナと同じエリア希望するから誰も入れるな」
「…うん」
私を抱いている間、エースは嘘みたいなことをたくさん言った。好きだ、ずっと好きだった、離れたくない、本当はずっとこうしたかった、でも関係が壊れるのが怖くてできなかった。それがエースの本心なのかはわからない。ただ一つ確かなことは、少なくとも私にとってみれば、それは見て見ぬ振りをしてきた本心だった。
「ゴールデンウィーク、会おう?」
ねだるような声が出た。
「…おう」
チャイムが鳴った。
引越し業者だろう。
これが終われば二人ともこの街を後にして、それぞれの新しい居場所へ行く。
*
チャイムが鳴ったのと同時に心臓が跳ねた。
バタバタと玄関に向かう。
「あぶねえから一発で開けんな」
「わっ、ごめん」
「そうじゃねェ。変質者だったらどうすんだよ。確認してから開けろ」
「…そっか。気を付ける」
改めて目を上げた。
「いらっしゃい、エース」
「おう。邪魔するぜ」
「暦通り休み?」
「そうだ。明日から5連休」
「私も」
たった一ヶ月だけど、新しい仕事も忙しかったし余裕もなかったけど、でも、
「会いたかった」
逞しい腕に抱きしめられて、うっかり涙ぐみかける。
「…私も、」
先のことは分からない。
でも、今はこれだけでいい。
会いたいと思ったこと、愛おしいと思えること、ただそれだけで。
「エースに会いたかったよ」
何を見ているのか、前に目を向けたままのエースが言う。
エースの引っ越し当日の朝のことだった。
「俺の内定先、6月に配属決まるみてェなんだよ」
「…」
「ニナと同じエリア希望するから誰も入れるな」
「…うん」
私を抱いている間、エースは嘘みたいなことをたくさん言った。好きだ、ずっと好きだった、離れたくない、本当はずっとこうしたかった、でも関係が壊れるのが怖くてできなかった。それがエースの本心なのかはわからない。ただ一つ確かなことは、少なくとも私にとってみれば、それは見て見ぬ振りをしてきた本心だった。
「ゴールデンウィーク、会おう?」
ねだるような声が出た。
「…おう」
チャイムが鳴った。
引越し業者だろう。
これが終われば二人ともこの街を後にして、それぞれの新しい居場所へ行く。
*
チャイムが鳴ったのと同時に心臓が跳ねた。
バタバタと玄関に向かう。
「あぶねえから一発で開けんな」
「わっ、ごめん」
「そうじゃねェ。変質者だったらどうすんだよ。確認してから開けろ」
「…そっか。気を付ける」
改めて目を上げた。
「いらっしゃい、エース」
「おう。邪魔するぜ」
「暦通り休み?」
「そうだ。明日から5連休」
「私も」
たった一ヶ月だけど、新しい仕事も忙しかったし余裕もなかったけど、でも、
「会いたかった」
逞しい腕に抱きしめられて、うっかり涙ぐみかける。
「…私も、」
先のことは分からない。
でも、今はこれだけでいい。
会いたいと思ったこと、愛おしいと思えること、ただそれだけで。
「エースに会いたかったよ」
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