引越し、5月
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「…ちょっと私鍵返してくる」
「あーじゃあ返し終わったら昼飯行こうぜ」
「うん、連絡する」
エースの部屋を後にし、足早に自分の部屋へ歩き出す。
玄関に入りバタンとドアを閉めた。
「…はあ」
あれが夢でなければ。
早朝目が覚めた時、後ろからエースに抱きしめられていたと思う。
意識しすぎた首筋や肩がまだピリピリと緊張している。
出来るだけあの部屋に戻るのを先送りしたい気持ちとは裏腹に、管理会社の人はすぐに来てほとんど待つことなく鍵を返せてしまった。
”終わったー”
”昼飯奢るからひとまず荷物持ってこっち来いよ”
最低限の荷物だけ入ったスーツケースを引っ張って、1階の彼の部屋へ向かう。
「…お邪魔します」
さっきまでいた場所なのに、一度意識してしまうと途端に居心地が悪くなるのはなぜだろう。近くの定食屋で昼ご飯を食べ終わり、エースの部屋に戻ってから無言で荷造りを続けた。荷物の大半は服や漫画で、深夜までやれば何とか終わりそうでホッとする。
夕日が部屋に射す頃、近づいてきたエースが横に座った。私は教科書をダンボールに詰めながら一瞬エースに顔を向け、また手元に視線を戻す。
「晩飯行くか」
「そうだね、おなかすいて来ちゃった」
「焼肉行こうぜ」
「ああ、学校の正門横のとこ?」
「おう。この時間からならまだ混んでねェし」
「いいね。飲み放題もつけてくれるんでしょ?」
上手く収納できたことに満足して顔を上げると、目の前にエースの顔があった。近くない?と言おうとして横に引いた唇に、かさついた唇が重なる。エースの顔の右半分をオレンジの光が照らしていた。
「…すぐ行けるか?」
「…あ、うん」
「じゃあ行くぞ」
上手く働かない頭のまま焼肉を食べ、さっきのことにはどちらも触れないままエースの部屋へ戻った。ひとまず荷造りを完成させなくちゃという一心で、それ以外のことは意識的に頭の中から排除した。
23:35。
最後のダンボールにガムテープを貼る。
「…終わったー!!」
「マジ助かった…!ありがとう…!!」
あとは大きい家具とか家電を業者に運び出してもらえば完了だ。
「おつかれさまぁ」
「マジありがとな、ニナ」
「つっかれたー…」
目の前にあったベッドにばふっと突っ伏した。それ以外の家具、こたつやクッションはもう解体したり荷造りしてしまっている。
「…なァ」
不意にエースの声が低く響く。
「…もしお前が嫌なら、おれは床で寝る」
顔を下に向けたまま体だけ起こした。どんな顔をしているか確かめる勇気はなかった。
「でももしお前がいいなら、…」
睡眠不足と疲労とアルコールで頭の芯がくらくらしていた。そのせいにしてしまおうと思った。
「いいよ」
「…へ?」
「いいよ。床で寝るの体に悪いでしょ」
「…お前意味わかって言ってんのか」
肩を掴まれてエースの方に向かされる。あ、と思った瞬間には唇が重なっていた。さっきよりも熱い唇。
「この先の話をしてんだぞ」
「わかってるよ」
黒々とした目が大きく見開かれた。
「わかって言ってるもん」
ぐい、と引っ張り上げられたと思ったら、ベットを背にエースに押し倒されていた。
「…そうか」
降ってくる唇に目を閉じる。
「あーじゃあ返し終わったら昼飯行こうぜ」
「うん、連絡する」
エースの部屋を後にし、足早に自分の部屋へ歩き出す。
玄関に入りバタンとドアを閉めた。
「…はあ」
あれが夢でなければ。
早朝目が覚めた時、後ろからエースに抱きしめられていたと思う。
意識しすぎた首筋や肩がまだピリピリと緊張している。
出来るだけあの部屋に戻るのを先送りしたい気持ちとは裏腹に、管理会社の人はすぐに来てほとんど待つことなく鍵を返せてしまった。
”終わったー”
”昼飯奢るからひとまず荷物持ってこっち来いよ”
最低限の荷物だけ入ったスーツケースを引っ張って、1階の彼の部屋へ向かう。
「…お邪魔します」
さっきまでいた場所なのに、一度意識してしまうと途端に居心地が悪くなるのはなぜだろう。近くの定食屋で昼ご飯を食べ終わり、エースの部屋に戻ってから無言で荷造りを続けた。荷物の大半は服や漫画で、深夜までやれば何とか終わりそうでホッとする。
夕日が部屋に射す頃、近づいてきたエースが横に座った。私は教科書をダンボールに詰めながら一瞬エースに顔を向け、また手元に視線を戻す。
「晩飯行くか」
「そうだね、おなかすいて来ちゃった」
「焼肉行こうぜ」
「ああ、学校の正門横のとこ?」
「おう。この時間からならまだ混んでねェし」
「いいね。飲み放題もつけてくれるんでしょ?」
上手く収納できたことに満足して顔を上げると、目の前にエースの顔があった。近くない?と言おうとして横に引いた唇に、かさついた唇が重なる。エースの顔の右半分をオレンジの光が照らしていた。
「…すぐ行けるか?」
「…あ、うん」
「じゃあ行くぞ」
上手く働かない頭のまま焼肉を食べ、さっきのことにはどちらも触れないままエースの部屋へ戻った。ひとまず荷造りを完成させなくちゃという一心で、それ以外のことは意識的に頭の中から排除した。
23:35。
最後のダンボールにガムテープを貼る。
「…終わったー!!」
「マジ助かった…!ありがとう…!!」
あとは大きい家具とか家電を業者に運び出してもらえば完了だ。
「おつかれさまぁ」
「マジありがとな、ニナ」
「つっかれたー…」
目の前にあったベッドにばふっと突っ伏した。それ以外の家具、こたつやクッションはもう解体したり荷造りしてしまっている。
「…なァ」
不意にエースの声が低く響く。
「…もしお前が嫌なら、おれは床で寝る」
顔を下に向けたまま体だけ起こした。どんな顔をしているか確かめる勇気はなかった。
「でももしお前がいいなら、…」
睡眠不足と疲労とアルコールで頭の芯がくらくらしていた。そのせいにしてしまおうと思った。
「いいよ」
「…へ?」
「いいよ。床で寝るの体に悪いでしょ」
「…お前意味わかって言ってんのか」
肩を掴まれてエースの方に向かされる。あ、と思った瞬間には唇が重なっていた。さっきよりも熱い唇。
「この先の話をしてんだぞ」
「わかってるよ」
黒々とした目が大きく見開かれた。
「わかって言ってるもん」
ぐい、と引っ張り上げられたと思ったら、ベットを背にエースに押し倒されていた。
「…そうか」
降ってくる唇に目を閉じる。