引越し、7月
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上京して3年。
今年の年明けくらいからネットに出るようになった「”とりあえず3年”が過ぎた」という転職の広告。それにまんまと乗せられた訳でもないんだけど、3年ちょっと勤めた会社を辞めた。
理由は簡単だ。社会勉強のつもりで向いてなさそうな仕事をしてみたけど、得意でもなく好きですらないことを毎日繰り返すのは体に悪かった、というだけ。入社時、適正よりやや軽い程度だった体重は、1年で美容体重、2年でモデル体重になり、図らずも10kgのダイエットに成功した。久しぶりに幼なじみと会った時、ふと「中学生の時と同じ体重だ」と言ったら「中学の時はもっと肌のハリがあった」と返され、自分を客観視した結果、環境を変えることにした。
「けっこうありきたりな話よね、上京して3年で地元に戻って来るって」
「まあそうかもな」
「なんか周りに流されたみたいでちょっと嫌だわ」
「お前がそういう奴じゃないのは付き合い長いやつなら大概知ってるだろ」
「確かに」
実家の隣町に部屋を借りた。幼なじみのサボが住む地区で土地勘があったから。そのサボをラーメンで買収し、引っ越しの荷受けに駆り出している。
「あと何したらいい?」
「…そうね、掃除はほとんど終わっちゃったし、その辺でくつろいでて」
「あァ、そうするよ」
そう言って幼なじみは何もないフローリングに寝転んだ。
「どうだった、この3年間」
「うーん…」
どう、と言われましても。
「なんか、よくわかんない。自分が不甲斐なかったことはたくさんあったけど、あれ以上頑張れなかったし、辛かったばっかりでもないし、でもまだいい思い出って言えるほど遠ざかってもないし」
ぞうきんを絞る手に力を籠める。
「ただまあ、…やり切ったとは思うかな」
「俺はお前が頑張ってたの知ってるよ」
振り返るとこれでもかというほど爽やかな笑顔が浮かべられていて、私はちょっと辟易する。この幼なじみは器用なのだ。勉強でも、スポーツでも、人間関係でも、昔からとても要領が良かった。
爽やかな笑顔もその一環。そのカードを切れば大抵の女子が自分に甘くなることを知っているんだろう。
子供の頃、この笑顔で日直とか掃除当番を回避していたのを思い出した。この人のそういう所は変わらないのかもしれない。少しだけ口角を緩める。
「ありがと」
そう言うと、サボのパーフェクトスマイルが崩れた。
「どうかした?」
「…いや、別に」
今年の年明けくらいからネットに出るようになった「”とりあえず3年”が過ぎた」という転職の広告。それにまんまと乗せられた訳でもないんだけど、3年ちょっと勤めた会社を辞めた。
理由は簡単だ。社会勉強のつもりで向いてなさそうな仕事をしてみたけど、得意でもなく好きですらないことを毎日繰り返すのは体に悪かった、というだけ。入社時、適正よりやや軽い程度だった体重は、1年で美容体重、2年でモデル体重になり、図らずも10kgのダイエットに成功した。久しぶりに幼なじみと会った時、ふと「中学生の時と同じ体重だ」と言ったら「中学の時はもっと肌のハリがあった」と返され、自分を客観視した結果、環境を変えることにした。
「けっこうありきたりな話よね、上京して3年で地元に戻って来るって」
「まあそうかもな」
「なんか周りに流されたみたいでちょっと嫌だわ」
「お前がそういう奴じゃないのは付き合い長いやつなら大概知ってるだろ」
「確かに」
実家の隣町に部屋を借りた。幼なじみのサボが住む地区で土地勘があったから。そのサボをラーメンで買収し、引っ越しの荷受けに駆り出している。
「あと何したらいい?」
「…そうね、掃除はほとんど終わっちゃったし、その辺でくつろいでて」
「あァ、そうするよ」
そう言って幼なじみは何もないフローリングに寝転んだ。
「どうだった、この3年間」
「うーん…」
どう、と言われましても。
「なんか、よくわかんない。自分が不甲斐なかったことはたくさんあったけど、あれ以上頑張れなかったし、辛かったばっかりでもないし、でもまだいい思い出って言えるほど遠ざかってもないし」
ぞうきんを絞る手に力を籠める。
「ただまあ、…やり切ったとは思うかな」
「俺はお前が頑張ってたの知ってるよ」
振り返るとこれでもかというほど爽やかな笑顔が浮かべられていて、私はちょっと辟易する。この幼なじみは器用なのだ。勉強でも、スポーツでも、人間関係でも、昔からとても要領が良かった。
爽やかな笑顔もその一環。そのカードを切れば大抵の女子が自分に甘くなることを知っているんだろう。
子供の頃、この笑顔で日直とか掃除当番を回避していたのを思い出した。この人のそういう所は変わらないのかもしれない。少しだけ口角を緩める。
「ありがと」
そう言うと、サボのパーフェクトスマイルが崩れた。
「どうかした?」
「…いや、別に」
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