短いお話をあなたに
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長いようで短かったな、と実家を見上げて思った。
4年前、自由の軽さに浮き上がりそうになりながら、ほんの少しの不安を抱えてこの家を振り返ったのを思い出す。
「いってきまーす」
「買い物行くのはいいけど、あんた早めに荷物片づけちゃいなさいよ」
「わかってるって。ちょっとずつやるから」
大学4年間は忙しく過ぎた。
授業にサークルにバイトに飲み会に駆け回って、家を出なかった日なんてほとんどなかったし、その希少な数日でさえ誰にも会わない日はなかったな、とぼんやり考える。
元カレという存在が二人できた。
2人でいる幸福と煩わしさも、1人でいる充足感と寂しさも知った。
ほんと、忙しくて楽しい日々だった。
「ニナ?」
不意に感慨から現実に引き戻される。
振り返って目に映った人を思い出すのに、2秒くらいかかってしまった。
「…わールフィ久しぶりー!」
「すげェ、本物のニナだ」
「そうだよ」
「何年ぶりだ?」
「一年半かな」
ルフィは高校の同級生だ。
親友のナミがルフィと仲良かったから、高校3年間はほとんど同じグループで過ごした。
「ナミがお前がこっち戻ってきて仕事するって言うからよ」
「うん、そう。4月から働くよ」
「ニナ仕事どこになったんだ?」
「風車町のほうの小さい工場」
「へーうちに近ェな!」
「そっか、あっちの方だったっけ」
「じゃあよじゃあよ、今度うちの近くのお好み焼き屋行こうぜ!」
「あー大盛無料のとこね」
「あとよ、高校の近くの焼肉屋だろ、駅前のラーメン屋だろ、ナミん家の近くのカツ丼屋だろ、」
「ちょ、ちょっと待って」
目をキラキラさせてヨダレを垂らし始めるルフィをなんとか制止する。
「最近行ってなかったの?」
「いんにゃ、行ってたんだけどよ」
「だけど?」
「他のヤツらと食ってもなーんか味違ェんだよ」
「そうなの?」
「そしたらサンジに、ニナがいねぇせいだって言われてよ」
「…え」
「おととしの夏にニナが帰ってきた時みんなで焼き肉食っただろ、そん時はちゃんと美味かったんだ」
にっこりと太陽のような笑顔を浮かべたルフィが言う。
「お好み焼きもカツ丼も、お前と食うのが一番うめェ!!」
そっか、と乾いた声を絞り出して足元に目を落とす。
脳内の食欲を感じる場所は、他の欲望のそれとも近いって聞いたことがある。
行きたい店をどんどん挙げ連ねていく彼に、場違いな鼓動が高鳴っていた。
4年前、自由の軽さに浮き上がりそうになりながら、ほんの少しの不安を抱えてこの家を振り返ったのを思い出す。
「いってきまーす」
「買い物行くのはいいけど、あんた早めに荷物片づけちゃいなさいよ」
「わかってるって。ちょっとずつやるから」
大学4年間は忙しく過ぎた。
授業にサークルにバイトに飲み会に駆け回って、家を出なかった日なんてほとんどなかったし、その希少な数日でさえ誰にも会わない日はなかったな、とぼんやり考える。
元カレという存在が二人できた。
2人でいる幸福と煩わしさも、1人でいる充足感と寂しさも知った。
ほんと、忙しくて楽しい日々だった。
「ニナ?」
不意に感慨から現実に引き戻される。
振り返って目に映った人を思い出すのに、2秒くらいかかってしまった。
「…わールフィ久しぶりー!」
「すげェ、本物のニナだ」
「そうだよ」
「何年ぶりだ?」
「一年半かな」
ルフィは高校の同級生だ。
親友のナミがルフィと仲良かったから、高校3年間はほとんど同じグループで過ごした。
「ナミがお前がこっち戻ってきて仕事するって言うからよ」
「うん、そう。4月から働くよ」
「ニナ仕事どこになったんだ?」
「風車町のほうの小さい工場」
「へーうちに近ェな!」
「そっか、あっちの方だったっけ」
「じゃあよじゃあよ、今度うちの近くのお好み焼き屋行こうぜ!」
「あー大盛無料のとこね」
「あとよ、高校の近くの焼肉屋だろ、駅前のラーメン屋だろ、ナミん家の近くのカツ丼屋だろ、」
「ちょ、ちょっと待って」
目をキラキラさせてヨダレを垂らし始めるルフィをなんとか制止する。
「最近行ってなかったの?」
「いんにゃ、行ってたんだけどよ」
「だけど?」
「他のヤツらと食ってもなーんか味違ェんだよ」
「そうなの?」
「そしたらサンジに、ニナがいねぇせいだって言われてよ」
「…え」
「おととしの夏にニナが帰ってきた時みんなで焼き肉食っただろ、そん時はちゃんと美味かったんだ」
にっこりと太陽のような笑顔を浮かべたルフィが言う。
「お好み焼きもカツ丼も、お前と食うのが一番うめェ!!」
そっか、と乾いた声を絞り出して足元に目を落とす。
脳内の食欲を感じる場所は、他の欲望のそれとも近いって聞いたことがある。
行きたい店をどんどん挙げ連ねていく彼に、場違いな鼓動が高鳴っていた。
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