終わりと始まりの夏
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今年もまた新人歓迎会の時期。
歓迎される立場のはずの人間がなぜか宴会芸を求められるのが、
この会社のいいところであり悪いところであると思う。
歓迎会の運営は2-3年目がするから、私たち4年目はアドバイザー。
2-3年目は本社勤務の子が多いから、
必然的に本社にいて時間の融通の利く私たち営業職に質問は集中する。
そしてもう一人はあの感覚派のエース。
言いたくないが説明もざっくりしている。
この一カ月、代わる代わる訪れる後輩を見越して仕事を前倒しして正解だった。
でなければ今月の実績は散々な結果になっていたと思う。
成果が数字に表れる分厳しい仕事だし、
プレッシャーに限界を感じて辞めようと思った夜は数えきれない。
もともと絵にかいたように営業向きの性格のエースと違って、
私自身は自分のペースで資料とか作ってる方が向いていることも自覚している。
それでも。
会社の屋台骨を支えるこの仕事を、私は誇りに思っている。
「シホさーん、良かったー会えないかと思いました!」
「なんかあった?」
「お店決めたんですけど、新人さん分の経費精算って、」
ひとしきり後輩のまとまらない説明に耳を傾けて、
つまりこういうことだよね?とまとめ直す癖は、営業の仕事の賜物かもしれない。
「そうです!それが聞きたかったんです!さっき経理課行ったら取り合ってもらえなくて」
「今の説明だと、何して欲しいのか伝わらないと思うよ」
「うう…さっきのシホさんの言ったとおりに聞きますね」
「いってらっしゃい」
入れ替わりでサッチさんが歩いてくるのが見えた。
「さすが人気者―」
「いえいえー、一番捕まえやすいんだと思いますよー?」
「いやー?うちの新人も言ってたよ、シホちゃんが一番話しやすいって」
「ふふ、それは光栄ですねー」
「んー、いい笑顔、武器だよねーそれ」
「褒めても何も出ませんってー」
語尾の波長を相手に合わせる。
無意識レベルでできるようになってきた、営業のテクニック。
「話しやすい」はこの仕事をする上では大きな武器だ。
「ほんっと、営業向きだわー」
「そうですかねー?」
フロアの入口からサッチさんを呼ぶ声が聞こえて、
「じゃあまたなー」と去っていく後姿を見送る。
歓迎される立場のはずの人間がなぜか宴会芸を求められるのが、
この会社のいいところであり悪いところであると思う。
歓迎会の運営は2-3年目がするから、私たち4年目はアドバイザー。
2-3年目は本社勤務の子が多いから、
必然的に本社にいて時間の融通の利く私たち営業職に質問は集中する。
そしてもう一人はあの感覚派のエース。
言いたくないが説明もざっくりしている。
この一カ月、代わる代わる訪れる後輩を見越して仕事を前倒しして正解だった。
でなければ今月の実績は散々な結果になっていたと思う。
成果が数字に表れる分厳しい仕事だし、
プレッシャーに限界を感じて辞めようと思った夜は数えきれない。
もともと絵にかいたように営業向きの性格のエースと違って、
私自身は自分のペースで資料とか作ってる方が向いていることも自覚している。
それでも。
会社の屋台骨を支えるこの仕事を、私は誇りに思っている。
「シホさーん、良かったー会えないかと思いました!」
「なんかあった?」
「お店決めたんですけど、新人さん分の経費精算って、」
ひとしきり後輩のまとまらない説明に耳を傾けて、
つまりこういうことだよね?とまとめ直す癖は、営業の仕事の賜物かもしれない。
「そうです!それが聞きたかったんです!さっき経理課行ったら取り合ってもらえなくて」
「今の説明だと、何して欲しいのか伝わらないと思うよ」
「うう…さっきのシホさんの言ったとおりに聞きますね」
「いってらっしゃい」
入れ替わりでサッチさんが歩いてくるのが見えた。
「さすが人気者―」
「いえいえー、一番捕まえやすいんだと思いますよー?」
「いやー?うちの新人も言ってたよ、シホちゃんが一番話しやすいって」
「ふふ、それは光栄ですねー」
「んー、いい笑顔、武器だよねーそれ」
「褒めても何も出ませんってー」
語尾の波長を相手に合わせる。
無意識レベルでできるようになってきた、営業のテクニック。
「話しやすい」はこの仕事をする上では大きな武器だ。
「ほんっと、営業向きだわー」
「そうですかねー?」
フロアの入口からサッチさんを呼ぶ声が聞こえて、
「じゃあまたなー」と去っていく後姿を見送る。