終わりと始まりの夏
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
だんだん会話が途切れがちになったころ、不意にエースが呟いた。
「おれ、今日誕生日」
「え、」
おめでとうと言おうとしてエースの顔を見ると、その言葉がまるで似合わない表情をしていた。
「…おふくろの命日でもある」
そういえばエースから親御さんの話を聞いたことがない。
いつも仲のいい兄弟たちのエピソードばかりだった。
「…そう、なんだ」
「…」
なんて反応したらいいんだろう。
次の言葉を探すけれど見つからなかった。
「おれ、人より長く腹ん中にいたんだとよ。それがもとでおふくろは死んだ」
エースが空を見上げて白い息を吐いた。
「…おれが殺したんだ」
言い表せない感情が急に沸き立った。
それを必死に抑えて、言葉を選ぶ。
「私、子供を産んだことないけど、」
エースの黒い瞳が私を見た。
ここで薄っぺらい慰めの言葉を受け取ることを、きっとこの人は望んでいないし、私もそんな上っ面な言葉をかけたくない。
「自分の子供がそんなこと言ってたら、張り倒すわ」
黒い瞳がまんまるに見開かれた。
「私が代わりに張り倒してあげようか?」
笑顔を添えて言うと、エースを取り巻いていた尖った空気が目に見えて和らいだ。
「マジかお前けっこう凶暴なんだな」
「こう見えて割と重いパンチ打つからね私」
「おお、そりゃあ怖えな」
「ちょっとー本気にしてないでしょ!」
「ハハ、ワリィワリィ」
エースの笑顔が元に戻った。
だからってこの人が抱えるものが軽くなったわけではないのかもしれないけど。
「…もしさ、」
「あ?」
「そういう話したくなったら呼んで。さっきは茶化しちゃったけど、聞くだけならできるし」
「…あァ。ありがとな」
列に目をやる。
もうすぐでやっと参拝ができる。
自分の仕事と一緒に、この人の罪悪感が少しでも和らぐようにって、祈ってみようか。
May this year be the best of your life.
「おれ、今日誕生日」
「え、」
おめでとうと言おうとしてエースの顔を見ると、その言葉がまるで似合わない表情をしていた。
「…おふくろの命日でもある」
そういえばエースから親御さんの話を聞いたことがない。
いつも仲のいい兄弟たちのエピソードばかりだった。
「…そう、なんだ」
「…」
なんて反応したらいいんだろう。
次の言葉を探すけれど見つからなかった。
「おれ、人より長く腹ん中にいたんだとよ。それがもとでおふくろは死んだ」
エースが空を見上げて白い息を吐いた。
「…おれが殺したんだ」
言い表せない感情が急に沸き立った。
それを必死に抑えて、言葉を選ぶ。
「私、子供を産んだことないけど、」
エースの黒い瞳が私を見た。
ここで薄っぺらい慰めの言葉を受け取ることを、きっとこの人は望んでいないし、私もそんな上っ面な言葉をかけたくない。
「自分の子供がそんなこと言ってたら、張り倒すわ」
黒い瞳がまんまるに見開かれた。
「私が代わりに張り倒してあげようか?」
笑顔を添えて言うと、エースを取り巻いていた尖った空気が目に見えて和らいだ。
「マジかお前けっこう凶暴なんだな」
「こう見えて割と重いパンチ打つからね私」
「おお、そりゃあ怖えな」
「ちょっとー本気にしてないでしょ!」
「ハハ、ワリィワリィ」
エースの笑顔が元に戻った。
だからってこの人が抱えるものが軽くなったわけではないのかもしれないけど。
「…もしさ、」
「あ?」
「そういう話したくなったら呼んで。さっきは茶化しちゃったけど、聞くだけならできるし」
「…あァ。ありがとな」
列に目をやる。
もうすぐでやっと参拝ができる。
自分の仕事と一緒に、この人の罪悪感が少しでも和らぐようにって、祈ってみようか。
May this year be the best of your life.
10/10ページ