本編
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たった数年でいい、今見てるのとは違う世界が見たい。
ここではないところへ、行ってみたい。
あの日の約束を守り続けるには、これしか方法がなかった。
このまま進んでいっても、きっと心か体が破壊されて医者で居続けることはできなくなる。
一番大変だったのはローへの報告だった。
「…ハッ、寝言は寝て言え」
「本当だよ、もう受け入れ先も決まったし、ドイツ語の試験も受かったし」
「…ドイツだと…?」
「医学の本場でしょ?」
「ちょっと待て、お前、」
「遅くとも2か月後には出発する予定だから」
「聞けニナ!」
ローが声を荒らげる。
「なんで俺の許可もなくそんなこと決めてんだよ」
「…」
「だいたいこっちはお前が帰ってくると思って動いてんだぞ」
「…」
「それをお前と来たら、」
「ローにとって、」
灰色の瞳を目線で押し返す。
「私ってなに?」
「…は?」
「幼なじみって、そこまで縛れるもの?」
「…何言ってやがる」
「私は、」
「ローと出会ったから、ここまで人生を変えたんだよ」
状況が違ったら、この言葉は花束だっただろう。
だけど今のこの言葉は、水盃だ。
これ以上、あなたのために私の人生を変えられない、っていう拒絶の言葉。
-ダンッ!!!
ローがテーブルを殴りつけた。
「…勝手にしろ」
視線を手元に落としたまま、ローは呻くように言った。
*
「キャプテン、過去最高レベルの荒れようだ」
「…どんな感じ?」
「殺伐としすぎて患者さんから複数件クレームが入ったらしい」
「…」
「ニナが戻ってくると思っていたんだろう」
「…ローにとっては、私は裏切り者なのかもね」
「裏切り者?」
「子供のころに、ローに言われたの。“お前、医者になれ”って」
「…あァ、前に言ってたな」
「それってローとしては“一緒に居ろ”って意味だったのかもしれない」
「…」
「だけど、私は、ローと医者になる約束をしたの。
一緒にいることを、約束したわけじゃないもの」
「…ニナ」
「たとえローが、同じ意味で言っていたとしても、私にとっては、違う意味だよ」