本編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
{ニナ先生!重症の患者さんがいるんで助けてください!}
と連絡が来たのは2週間前だった。
{どんな状況ですか?}
{患者は24歳男性で、不眠症の既往あり。
身長191cmのやせ型で、かなりイイカラダしてます。
主訴は最近イライラすること、眠れないこと、女とヤル気になれないことを訴えています}
知るか。
{それで?}
{ニナ先生の力が必要です!}
{へーじゃあその患者さんに全麻したらいいかな。体重は?}
{んもー!わかってるくせに!}
{わかんないなぁ}
{ニナ欠乏症なの!キャプテンが!!}
たぶん、ローが荒れてどうしようもなくて、私に助けを求めて来たんだろう。
ただ荒れるだけならいいけど、もし持病が再燃したら大変だ。
就職してから半年。しかも秋。
そろそろ様子を見に行ってもいいかもしれない。
{わかりました。お力になりましょう}
{やったー!先生は私のガブリエルです!}
{なにそれ}
{こないだキャプテンが患者さんに言われたらしい}
{ガブリエルって…天使?}
{たぶん}
*
ローたちが今住んでいる辺りまで、私の赴任先からは車で4時間くらいかかる。
ただ、車以外に使える交通手段が限られているから、
仕事終わりに車を飛ばして、みんなに会いに行く計画を立てた。
計画通り、幼なじみのびっくり顔を見ることに成功した。
3次会と称して馴染みの居酒屋に場所を移しても、旧友たちはよく飲みよく喋りよく笑った。
「ニナーお前運転してきたんだってー?」
「お前んとこからだと何時間くらいかかんだよ」
「今日は4時間くらいかなあ」
「うっわ4時間とかオレ絶対無理」
「夜は飛ばせるからいいけど昼は確かにもっとかかるよ」
「お前学生の時から運転好きだったもんな」
運転の疲れもあってか、お酒が回るのがいつもより早い気がして、
ペースを落としてぼんやりみんなを眺めていた。
ローが、24歳。
「おい、なに見とれてやがる」
「ん?いや、24歳かぁと思って」
「…そうだな」
「初めて会ってから14年だって」
「長えな」
「長いね」
その長い間、つい半年前まで、私たちはずっと同じ進路を進んでいた。
小学校から大学まで、もちろんクラスが別になることの方が多かったけど、ずっと同じ学校に通った。
周りの人に言うと本気で驚かれる。
なにより、私がローに言われて医者になったことを。
「最近どう」
「どうとは」
「うーん、眠れてる?」
「いつも通りだ」
「…3時間弱ってとこ?」
「それは眠れた方だな」
「そっか」
さりげなく目元と首に視線を向ける。
痩せた分、目元の印象は変わってるけど、首の見た目は変わらない。
「…診察してんじゃねえよ」
「やっぱバレるか」
「別に変わってねぇって」
「でも痩せたでしょ?目元が気になって」
「測ってねぇからどうだかな」
「ちょっと鑑別させて」
喉元に両手を伸ばす。
ローは大人しく、わずかに顎を上げた。
この距離を許されるのは、ほんの一部の人間。
「…腫れては…ないね」
「だから言ったろ」
「診察できて満足です」