本編
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レジュメをめくりながら教科書を読み解いていく。
人体の基礎は難しい。特に目に見えないレベルの話は苦手だ。
部活の先輩経由で入手した過去問に、自分なりの解釈を書き加えながら読み進む。
来月に入ったら試験があるから、ちゃんと理解しておかないと。
時計を見ると11時を過ぎていた。
-ガチャ
玄関から音がして、足音が向かってくる。
「おかえりー」
「…」
「ニナ―!邪魔するぞ!」
「こんな時間に悪いな」
「いらっしゃーい」
ローを先頭にシャチとペンギンが入ってきた。
最近は部活帰りに週3日は来ていると思う。
わいわいとお酒を広げ始めた2人を尻目にローは自室に入っていく。
「…ご機嫌斜め?」
「どうもそうらしい」
「彼女とひと悶着あったようだ」
「あれ、付き合いだしたばっかりだよね、マネの先輩と」
ローは大学でアイスホッケー部に入った。
もともとの運動神経がいいからか、既にレギュラー目前らしく、
同期から「キャプテン」と呼ばれ始めたそうだ。
「いやなんか今日ケンカしてたみたいでよ」
「あらあら」
「すごい捨て台詞吐いてたよな」
「…まァな」
ビクッとして振り返るとスウェットに着替えたローが立ってた。
「…なんて言ったの?」
「…」
「『寄ってくる女なんかいくらでもいんだよ』、ですよね?」
「聞いてたのかテメェ」
「…否めないのが腹立つ」
「あーあの先輩高根の花って感じで良かったけどなー」
「じゃあお前が付き合えばいいじゃねぇか、シャチ」
「え、別れたの?」
「あァ」
「またどうして」
「オレのやり方に口出ししてくる女は願い下げだ」
「…出たローの唯我独尊」
トイレに向かうローの後姿を目で追ったあと、二人に視線を戻す。
「…もしかしてだけど」
「…あァ」
「前と同じ?」
「…まァ、そうだな」
前と同じ、というのは、前の彼女と別れた理由と同じ、という意味だ。
前の彼女と別れたのは、端的に言えば、私が原因だ。
女と一緒に住むのを辞めてと彼女に言われて、ローが彼女を振る。
最初はクラスの女の子、次は部活の同期のマネの子、今回は部活のマネの先輩。
どんどん期間が短くなっているような気がする。
「ま、ニナのせいじゃねえよ」
「うーん、そうかな」
「その彼女がキャプテンを夢中にさせられなかったのが悪い!」
「言えてるな」
「…そうだね」
今、私はローと一緒に住んでいる。
雪国にあるこの大学に進むときに、コラさんと上海にいるお母さんが話し合って、
コラさんが偶然持ってた物件にすごく安い家賃で住まわせてもらうことになった。
交換条件として、おうちの掃除とか、ローのご飯支度とかをすることにはなったけど、
もともとコラさんの家でやっていたことだったから、それほど負担ではなかった。
ただ、普通自分の娘が年頃の異性と一緒に住むことに、母親は反対しそうなものだけど、
私の母は「むしろ安心!」と言っていて不思議だった。
もし。
ローを夢中にさせる彼女が現れて、私と住むのを反対したら、私は家を失うのかしら。
戻って来たローの顔を改めてみる。
高校の間にさらに伸びた身長は、クラスの中で頭一つ抜き出る状態だった。
身長だけじゃない。勉強も、スポーツも、見た目も。
泥臭い努力なしに上手くやれて人目を惹く、それが、トラファルガー・ローという人。
私は真逆だ。
何の努力もしなければ、すぐに集団に埋もれて底に落ちてしまう。
だから、勉強も、スポーツも、見た目も、努力をベースにあらゆることをしてかなくちゃ。
人体の基礎は難しい。特に目に見えないレベルの話は苦手だ。
部活の先輩経由で入手した過去問に、自分なりの解釈を書き加えながら読み進む。
来月に入ったら試験があるから、ちゃんと理解しておかないと。
時計を見ると11時を過ぎていた。
-ガチャ
玄関から音がして、足音が向かってくる。
「おかえりー」
「…」
「ニナ―!邪魔するぞ!」
「こんな時間に悪いな」
「いらっしゃーい」
ローを先頭にシャチとペンギンが入ってきた。
最近は部活帰りに週3日は来ていると思う。
わいわいとお酒を広げ始めた2人を尻目にローは自室に入っていく。
「…ご機嫌斜め?」
「どうもそうらしい」
「彼女とひと悶着あったようだ」
「あれ、付き合いだしたばっかりだよね、マネの先輩と」
ローは大学でアイスホッケー部に入った。
もともとの運動神経がいいからか、既にレギュラー目前らしく、
同期から「キャプテン」と呼ばれ始めたそうだ。
「いやなんか今日ケンカしてたみたいでよ」
「あらあら」
「すごい捨て台詞吐いてたよな」
「…まァな」
ビクッとして振り返るとスウェットに着替えたローが立ってた。
「…なんて言ったの?」
「…」
「『寄ってくる女なんかいくらでもいんだよ』、ですよね?」
「聞いてたのかテメェ」
「…否めないのが腹立つ」
「あーあの先輩高根の花って感じで良かったけどなー」
「じゃあお前が付き合えばいいじゃねぇか、シャチ」
「え、別れたの?」
「あァ」
「またどうして」
「オレのやり方に口出ししてくる女は願い下げだ」
「…出たローの唯我独尊」
トイレに向かうローの後姿を目で追ったあと、二人に視線を戻す。
「…もしかしてだけど」
「…あァ」
「前と同じ?」
「…まァ、そうだな」
前と同じ、というのは、前の彼女と別れた理由と同じ、という意味だ。
前の彼女と別れたのは、端的に言えば、私が原因だ。
女と一緒に住むのを辞めてと彼女に言われて、ローが彼女を振る。
最初はクラスの女の子、次は部活の同期のマネの子、今回は部活のマネの先輩。
どんどん期間が短くなっているような気がする。
「ま、ニナのせいじゃねえよ」
「うーん、そうかな」
「その彼女がキャプテンを夢中にさせられなかったのが悪い!」
「言えてるな」
「…そうだね」
今、私はローと一緒に住んでいる。
雪国にあるこの大学に進むときに、コラさんと上海にいるお母さんが話し合って、
コラさんが偶然持ってた物件にすごく安い家賃で住まわせてもらうことになった。
交換条件として、おうちの掃除とか、ローのご飯支度とかをすることにはなったけど、
もともとコラさんの家でやっていたことだったから、それほど負担ではなかった。
ただ、普通自分の娘が年頃の異性と一緒に住むことに、母親は反対しそうなものだけど、
私の母は「むしろ安心!」と言っていて不思議だった。
もし。
ローを夢中にさせる彼女が現れて、私と住むのを反対したら、私は家を失うのかしら。
戻って来たローの顔を改めてみる。
高校の間にさらに伸びた身長は、クラスの中で頭一つ抜き出る状態だった。
身長だけじゃない。勉強も、スポーツも、見た目も。
泥臭い努力なしに上手くやれて人目を惹く、それが、トラファルガー・ローという人。
私は真逆だ。
何の努力もしなければ、すぐに集団に埋もれて底に落ちてしまう。
だから、勉強も、スポーツも、見た目も、努力をベースにあらゆることをしてかなくちゃ。