第五章
夢小説設定
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ブルックのツアーに同行して2週間。
私はずっと気になっていたことをブルックに聞いてみた。
「ねえブルック、黄泉の国ってどんなところだった?」
「黄泉の国ですか?ヨホホ、そうですねえ」
ブルックはティーカップを置いてあごに指を当てた。
「中まで入っていないのでわかりませんが、入口に門番のような人が居ましたねえ。一人はこん棒のようなものを振り回していて、その後ろにしゃがんでいる人と、立っている人が一人ずついました」
「門番が…3人」
「ええ。私はすごい勢いでしゃがんでる人の手袋目掛けて吸い込まれて行きました。その門に近づくと、後ろで立ってる人が言うんですよ。“ヨミヨミが来たぞ”って。そしたらこん棒を持った人が私を打ち返したんですよ…それはそれは強い力でね…。目玉が飛び出るかと思いました…まあその時私、魂だったんで、目はないんですけど!ヨホホホ!ソウルジョーーーク!!!」
「あ、ははは…」
「打ち返されて飛んでくる間に、“ホームラーーーン!!”って掛け声が聞こえましたね。それで、気付いたらあの霧の中に戻ってたわけですけど」
「…なるほど」
「…リオさんは、どうしてそれが知りたかったんですか?」
「…」
目を閉じる。ぼんやりとまぶたに浮かぶ、野球の打席みたいなシルエット。みんな、頭の上に輪が浮いていた。バッターポジションの男が振り回したこん棒に私はぶつかった。そこを離れる瞬間、審判の男が“ファーーール!!”と叫び、キャッチャーの男が“バカ!!まっすぐ打ち返せ!!そっちは…”と怒鳴ったことを覚えている。
「私もその3人、見たことがあるかもしれない」
「…おや、そうですか」
「前の世界で、自動車にぶつかってからここに来るまでの間に」
「ジドウシャ?」
「その自動車って乗り物とぶつかると、命を落とすぐらい大きい事故に発展するの」
「…」
「特に私は大きい車が速いスピードで突っ込んできたから、…じゃあもしかしたら私、向こうの世界ではもう死んだのかもしれない」
急に涙が溜まり、止める間もなく零れ落ちた。少し悲しげな表情を浮かべるブルックに、誤魔化すように笑いかける。
最初からわかっていた。
認めたくなかっただけだ。
「リオさん」
ブルックの穏やかな声が響く。
「私ねェ、死んだ時、もしかして二度と目覚めないかもって思ったんですよ。それまで一度も死んだことなかったんですから。でも、蘇って、長―い暗闇も抜けて、こうやって皆さんと一緒にいる」
「…」
「…人生2周目って言うんですかねえ。1周目で無念だったこと、もちろんありますけど、戻ってやり直すことはできませんから。その分、皆さんと居る今を、しっかり生きようって思うんですよねえ」
「…2周目…」
「それでも考えてしまう時は、歌うことにしています。私には歌がありますから。そしてリオさん、あなたにも歌がある。」
「…うん」
「よければ一緒に1曲いかがですか?」
「…もちろん」
また一つ零れた涙を拭った。
<毎日はどんどん過ぎていくから、たまに立ち止まらないとわからないこともある
この道がどこへ行くのか、何が起こせるのかなんてわからないけど
いつか振り返る時、きっと今日が輝いて見える>
「いい歌ですねえ」
「お気に入りの歌なの」
「…誰かを本当に愛したことがある人の歌は、聴けばわかります。リオさんは、本当に素晴らしい歌を歌いますね」
「…ありがとう。ねえブルック」
「なんでしょう」
「歌は時々、祈りだね」
「…本当に、その通り」
私はずっと気になっていたことをブルックに聞いてみた。
「ねえブルック、黄泉の国ってどんなところだった?」
「黄泉の国ですか?ヨホホ、そうですねえ」
ブルックはティーカップを置いてあごに指を当てた。
「中まで入っていないのでわかりませんが、入口に門番のような人が居ましたねえ。一人はこん棒のようなものを振り回していて、その後ろにしゃがんでいる人と、立っている人が一人ずついました」
「門番が…3人」
「ええ。私はすごい勢いでしゃがんでる人の手袋目掛けて吸い込まれて行きました。その門に近づくと、後ろで立ってる人が言うんですよ。“ヨミヨミが来たぞ”って。そしたらこん棒を持った人が私を打ち返したんですよ…それはそれは強い力でね…。目玉が飛び出るかと思いました…まあその時私、魂だったんで、目はないんですけど!ヨホホホ!ソウルジョーーーク!!!」
「あ、ははは…」
「打ち返されて飛んでくる間に、“ホームラーーーン!!”って掛け声が聞こえましたね。それで、気付いたらあの霧の中に戻ってたわけですけど」
「…なるほど」
「…リオさんは、どうしてそれが知りたかったんですか?」
「…」
目を閉じる。ぼんやりとまぶたに浮かぶ、野球の打席みたいなシルエット。みんな、頭の上に輪が浮いていた。バッターポジションの男が振り回したこん棒に私はぶつかった。そこを離れる瞬間、審判の男が“ファーーール!!”と叫び、キャッチャーの男が“バカ!!まっすぐ打ち返せ!!そっちは…”と怒鳴ったことを覚えている。
「私もその3人、見たことがあるかもしれない」
「…おや、そうですか」
「前の世界で、自動車にぶつかってからここに来るまでの間に」
「ジドウシャ?」
「その自動車って乗り物とぶつかると、命を落とすぐらい大きい事故に発展するの」
「…」
「特に私は大きい車が速いスピードで突っ込んできたから、…じゃあもしかしたら私、向こうの世界ではもう死んだのかもしれない」
急に涙が溜まり、止める間もなく零れ落ちた。少し悲しげな表情を浮かべるブルックに、誤魔化すように笑いかける。
最初からわかっていた。
認めたくなかっただけだ。
「リオさん」
ブルックの穏やかな声が響く。
「私ねェ、死んだ時、もしかして二度と目覚めないかもって思ったんですよ。それまで一度も死んだことなかったんですから。でも、蘇って、長―い暗闇も抜けて、こうやって皆さんと一緒にいる」
「…」
「…人生2周目って言うんですかねえ。1周目で無念だったこと、もちろんありますけど、戻ってやり直すことはできませんから。その分、皆さんと居る今を、しっかり生きようって思うんですよねえ」
「…2周目…」
「それでも考えてしまう時は、歌うことにしています。私には歌がありますから。そしてリオさん、あなたにも歌がある。」
「…うん」
「よければ一緒に1曲いかがですか?」
「…もちろん」
また一つ零れた涙を拭った。
<毎日はどんどん過ぎていくから、たまに立ち止まらないとわからないこともある
この道がどこへ行くのか、何が起こせるのかなんてわからないけど
いつか振り返る時、きっと今日が輝いて見える>
「いい歌ですねえ」
「お気に入りの歌なの」
「…誰かを本当に愛したことがある人の歌は、聴けばわかります。リオさんは、本当に素晴らしい歌を歌いますね」
「…ありがとう。ねえブルック」
「なんでしょう」
「歌は時々、祈りだね」
「…本当に、その通り」