本編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
帰り道を歩く。
“ねえ、最後にもうひとついいかしら”
“イチカはどうして、彼があなたを好きだという可能性は考えないの?”
それはね、ロビン。
ゾロが最初に憧れた女の子はもうこの世にいなくて、永遠の憧れになってしまったから。
それから、昔一度はっきり聞いてしまったから。弱い奴に興味はないんだって。
くいなちゃんが亡くなる半年前、家の庭で遊んでいたら、道場の庭で会話する男の子たちの会話が聞こえてきたのだ。
“なー、今日はイチカ来ないのかな”
“やー来て欲しいわー”
“え、お前もイチカ好きなの?”
“当たり前じゃんかわいいし”
“うっそ知らんかった”
“お前はバレバレすぎだって”
自分の名前が出てきたこと、どうやら好かれているらしいことに私の身体は硬直した。
“でもあいつゾロと仲良くねェ?”
不意に出た名前に心臓が止まるかと思った。
“あ、おい、ゾロ!”
“なんだ”
“なァお前イチカのこと好きなの?”
“は?”
“だって仲良くね?お前ら”
“んな訳ねぇだろ”
そこで逃げればよかったのに、と後から何度思っただろう。
“おれは弱いやつにきょうみねェ”
じゃあくいなだな、なッ、ちげぇよ!!、そうかくいなか、と話している声が、右から左へ流れていくようだった。
今でも思い出すと胸の痛みを感じる。
それから、10年間。
私はゾロが好き。でもゾロは私を好きじゃないみたい。
傍に置いてくれるようになったのは、コウシロウ先生と約束したから。
河原でトレーニングするゾロを見ていた私が、知らないおじさんに連れ去られそうになって、ゾロがそれに気づいて助けてくれて、コウシロウ先生が「今度からゾロの側で見るようにしなさい。ゾロ、イチカを守ってあげるんだよ」と言った。
それからだ。ゾロが私と一緒にいてくれるようになったのは。
だからあれは好意じゃない。約束を果たそうとしているだけだ。責任を取っているだけだ。
ダメだな、今日は昔のことばかり思い出してしまう。
早く帰ってシャワー浴びてゆっくり寝よう。
そう思っていたのに。
家の前に人影。
恐怖が胸の底で大きく脈打った。
あれからまだ2週間も経ってない、まさか家を覚えられた?
人影がこっちを見るより先に元来た方向に向き直って走り始めた、つもりだったのに、
手首をがっちりと掴まれてそれが叶わなかった。
「っ、キャ、」
口を塞がれる。全身に鳥肌が立ってドッと冷や汗が吹き出した。でも。
「…おい」
耳を打った声は聞き慣れたもので、急激に体から力が抜けた。
“ねえ、最後にもうひとついいかしら”
“イチカはどうして、彼があなたを好きだという可能性は考えないの?”
それはね、ロビン。
ゾロが最初に憧れた女の子はもうこの世にいなくて、永遠の憧れになってしまったから。
それから、昔一度はっきり聞いてしまったから。弱い奴に興味はないんだって。
くいなちゃんが亡くなる半年前、家の庭で遊んでいたら、道場の庭で会話する男の子たちの会話が聞こえてきたのだ。
“なー、今日はイチカ来ないのかな”
“やー来て欲しいわー”
“え、お前もイチカ好きなの?”
“当たり前じゃんかわいいし”
“うっそ知らんかった”
“お前はバレバレすぎだって”
自分の名前が出てきたこと、どうやら好かれているらしいことに私の身体は硬直した。
“でもあいつゾロと仲良くねェ?”
不意に出た名前に心臓が止まるかと思った。
“あ、おい、ゾロ!”
“なんだ”
“なァお前イチカのこと好きなの?”
“は?”
“だって仲良くね?お前ら”
“んな訳ねぇだろ”
そこで逃げればよかったのに、と後から何度思っただろう。
“おれは弱いやつにきょうみねェ”
じゃあくいなだな、なッ、ちげぇよ!!、そうかくいなか、と話している声が、右から左へ流れていくようだった。
今でも思い出すと胸の痛みを感じる。
それから、10年間。
私はゾロが好き。でもゾロは私を好きじゃないみたい。
傍に置いてくれるようになったのは、コウシロウ先生と約束したから。
河原でトレーニングするゾロを見ていた私が、知らないおじさんに連れ去られそうになって、ゾロがそれに気づいて助けてくれて、コウシロウ先生が「今度からゾロの側で見るようにしなさい。ゾロ、イチカを守ってあげるんだよ」と言った。
それからだ。ゾロが私と一緒にいてくれるようになったのは。
だからあれは好意じゃない。約束を果たそうとしているだけだ。責任を取っているだけだ。
ダメだな、今日は昔のことばかり思い出してしまう。
早く帰ってシャワー浴びてゆっくり寝よう。
そう思っていたのに。
家の前に人影。
恐怖が胸の底で大きく脈打った。
あれからまだ2週間も経ってない、まさか家を覚えられた?
人影がこっちを見るより先に元来た方向に向き直って走り始めた、つもりだったのに、
手首をがっちりと掴まれてそれが叶わなかった。
「っ、キャ、」
口を塞がれる。全身に鳥肌が立ってドッと冷や汗が吹き出した。でも。
「…おい」
耳を打った声は聞き慣れたもので、急激に体から力が抜けた。