本編
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「乾杯しましょう」
「何にですかね」
「そうね…初めてのサシ飲み?」
「じゃあ、それに」
『乾杯』
ひとくちビールを飲んでグラスを置いたイチカが頭を下げた。
「ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした、ニコ先生」
「あら、2人の時はロビンと呼んでって言ったじゃない」
「でも、今回は教職員としてのロビンちゃんに迷惑をかけたから」
「…いいのよ。ああいう無責任な噂は、いつだって勝手に起きるわ」
イチカは私が助教として籍を置く社会学部の学生だ。
私が大学生の時、イチカの母と私は、今の私とイチカに同じく助教と学生という関係で、数人いる学生の中でも特に目をかけてもらっていた。時には家に招かれるほどに。
家からは通えないこの大学に入学するのを許したのも、私がいたからだと、イチカの母は言っていた。
事の発端は先週、風邪をこじらせてレポート提出日に登校できなかったイチカが、看病に来てくれた体育学部で剣道部のロロノアという生徒にそのレポートを託したことだった。
提出は学内のサーバーに接続し、メールに添付して行う決まりで、イチカは提出先である私にもメールでその旨伝えてくれていた。
「体育学部のロロノアという生徒のアドレスから提出します」「わかりました。お大事に」
ところが、剣道部の彼は添付の仕方が分からなかったのか、レポートを印刷してそのまま私の部屋に持って来た。
剣道部の実力者として有名な彼を見かけた誰かが「こんなところに来るはずがない、もしかしてニコ先生とデキてるのでは」と噂し始め、それが大事になり教授から呼び出しがかかった、というのがこの1週間の出来事。
「クローバー教授、大丈夫だった?」
「ええ、事情を話したらわかってくれたわ。それより、体調不良の生徒なら締め切りを遅らせてあげたほうが良かったんじゃないかって言われたわ」
「それは…私がどうしても締切守りたかったから…」
「あなたの真面目さは教授も買っていたわよ」
「でも結果的にロビンちゃんに迷惑を」
「イチカ?」
笑顔でイチカの言葉を封じる。
「もうその話はやめにしましょう?キリがないわ」
「…わかりました」
キャンディのような色のグロスが乗った唇で、ビールを飲む。
ゼミの男子学生たちが、イチカに対して好意的な印象を話しているのを最近よく耳にする。
「ふふ、イチカもお酒が飲める年になったのね」
「あ、うん。今年に入って急にビールがおいしくなってびっくりした」
「なにかを頑張っているとお酒は美味しく感じるものよ」
「…そういうもの?」
「ええ」
「…そっか」
「何にですかね」
「そうね…初めてのサシ飲み?」
「じゃあ、それに」
『乾杯』
ひとくちビールを飲んでグラスを置いたイチカが頭を下げた。
「ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした、ニコ先生」
「あら、2人の時はロビンと呼んでって言ったじゃない」
「でも、今回は教職員としてのロビンちゃんに迷惑をかけたから」
「…いいのよ。ああいう無責任な噂は、いつだって勝手に起きるわ」
イチカは私が助教として籍を置く社会学部の学生だ。
私が大学生の時、イチカの母と私は、今の私とイチカに同じく助教と学生という関係で、数人いる学生の中でも特に目をかけてもらっていた。時には家に招かれるほどに。
家からは通えないこの大学に入学するのを許したのも、私がいたからだと、イチカの母は言っていた。
事の発端は先週、風邪をこじらせてレポート提出日に登校できなかったイチカが、看病に来てくれた体育学部で剣道部のロロノアという生徒にそのレポートを託したことだった。
提出は学内のサーバーに接続し、メールに添付して行う決まりで、イチカは提出先である私にもメールでその旨伝えてくれていた。
「体育学部のロロノアという生徒のアドレスから提出します」「わかりました。お大事に」
ところが、剣道部の彼は添付の仕方が分からなかったのか、レポートを印刷してそのまま私の部屋に持って来た。
剣道部の実力者として有名な彼を見かけた誰かが「こんなところに来るはずがない、もしかしてニコ先生とデキてるのでは」と噂し始め、それが大事になり教授から呼び出しがかかった、というのがこの1週間の出来事。
「クローバー教授、大丈夫だった?」
「ええ、事情を話したらわかってくれたわ。それより、体調不良の生徒なら締め切りを遅らせてあげたほうが良かったんじゃないかって言われたわ」
「それは…私がどうしても締切守りたかったから…」
「あなたの真面目さは教授も買っていたわよ」
「でも結果的にロビンちゃんに迷惑を」
「イチカ?」
笑顔でイチカの言葉を封じる。
「もうその話はやめにしましょう?キリがないわ」
「…わかりました」
キャンディのような色のグロスが乗った唇で、ビールを飲む。
ゼミの男子学生たちが、イチカに対して好意的な印象を話しているのを最近よく耳にする。
「ふふ、イチカもお酒が飲める年になったのね」
「あ、うん。今年に入って急にビールがおいしくなってびっくりした」
「なにかを頑張っているとお酒は美味しく感じるものよ」
「…そういうもの?」
「ええ」
「…そっか」