本編
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震える声のイチカに、こっちが冷静にならなきゃと深呼吸する。
「イチカ、何があったか教えてくれる?」
「…今、家に帰ってきて…」
「うん」
「…ドア閉めようと思って、振り向いたら…」
「うん」
「…、パーカーと、靴しか身に着けてないおじさんが…」
「ああ…うん」
「…自分で…グリップして…」
「わかったわイチカ。もう言わなくて大丈夫。」
「…うん」
電話の向こうでイチカも深呼吸をしたようだった。視界の端でサンジくんがゆっくりタバコを吸ってるのが見える。
「今からそっちに行きましょうか?」
「ダメ!」
「わっ」
「あ、ごめん、…まだその人、家の前に居るかもしれないから、ナミが来たら危ないから」
「じゃあ警察呼んで、」
「それもダメ」
「じゃあ、ゾロは?」
イチカが少し黙った。迷うような間の後、溜息をつくように言葉が続く。
「…明日、剣道の大会だから」
「え?」
「前日にこんなことで騒がせたくない」
…この子は…。
「この頑固者!」
「う、」
「警察もゾロもダメって言うなら、いいわ、こっちから勝手に一人派遣するから」
「え?」
「サンジくん!」
電話から顔を離してサンジくんに向き直ると、お会計分も置いて準備万端になっていた。
「どこに行けばいい?」
「ひとまず学校の方に。詳しい住所は今送るから」
「わかった、任せてナミさん。イチカちゅわーーーん!!今行くからねーーー!!!」
後半は電話の向こうのイチカに対して大声を出した後、全速力で店を出ていくサンジくん。
「…というわけで今からサンジくんが行くから」
「え、そんな急に」
「下着は隠しておきなさいねー」
「…わかった」
「あとあんたの住所サンジくんに教えるから」
「…うん」
言うだけ言って電話を切ると、心配そうな顔でこっちを見てくるウソップに「変質者と遭遇したんだって」とだけ言ってビールに口付けた。あ、サンジくんに住所送らなきゃ。
「警察もゾロも呼んで欲しくないんだって」
「警察は分かるけどゾロまでイヤなのかよ」
「ゾロが明日大会だからって」
「…それはなんちゅーか…」
「ね。最近あの子なんか遠慮しすぎなのよね」
ゾロの耳に入れればきっとすぐ飛んでく。迷子にはなるけど。それくらいイチカを心配してるのは私たちの目から見ても確実なのに、イチカはどことなくゾロに頼るのを遠慮する。
「なんなのかしらね、あの2人の妙な温度差は。」