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本編

次の月はサガよりもっと減らしたメニューにした。鍛錬中は大丈夫だったけど、道場からの帰り道でまた貧血を起こした。

母さんが怒る声を聞きながら、くいなの死を思った。
葬列を歩いた、10歳のあの日。



「なんでだよ、くいな」

誰かが呟いた。

なんで。
くいなは女剣士の壁を超えようとしていた。超えられそうだった。
強くてかっこいい人だった。
なのに、信じられないような理由で、彼女は死んだ。

どうしても受け入れられなかったあたしは、理由をさがした。
葬列を歩きながら、ふと思いついた。
もしかして、女であることを超えることは、世界の禁忌みたいなものなんじゃねえか。
くいなはそれに触れてしまったんじゃねえか。



母さんの泣き声が響く中、あの日の思い付きが蘇って急に恐くなった。それは私の妄想だ、くいなの死にそんな勝手な解釈をしちゃいけない。頭ではそう思っても、怖くて怖くてたまらなかった。
10歳のあたしはそれが真実だと信じてしまったから。

気が付くと、「もう、剣道辞める」とつぶやいていた。



あたしがそう言った途端、母さんは見事に手のひらを返して「剣道は続けるべき」「ゾロ君たちに着いていけなくたっていいじゃない」「女の子の中で強くなればいい」と説得してきたけど、あたしの気持ちは変わらなかった。

ゾロとサガと一緒じゃないなら意味がないと思った。
一緒に強くなろうって約束したんだ。
あたしだけ弱いまま許されるなんて絶対に嫌だった。
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